2020 Fiscal Year Research-status Report
旧日本映画社撮影長崎原爆映像の超高度精密化と関連資料等による歴史的記録性の確立
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16K02429
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Research Institution | Aomori Public College |
Principal Investigator |
横手 一彦 青森公立大学, 経営経済学部, 教授 (60240199)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
野坂 昭雄 山口大学, 人文学部, 教授 (20331936)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 長崎原爆 / 長崎(浦上)原爆 / 長崎原爆映像資料 / 長崎の被ばく映像記録 / 被ばく視覚資料 / 旧日本映画社 / 長崎原爆文学 |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度は、コロナ渦の影響を直接に受け、科研費の研究資金に基づく、県境を越えた調査や実地踏査を行うことが出来なかった。広島平和記念資料館所蔵資料、及び長崎原爆資料館所蔵資料は、当該研究を遂行するために、必須の資料や文献等を所蔵する主たる施設である。加えて、国立国会図書館などにおける文献確認や資料収集も重要であると考えるが、同様の状況下において、そのこともなし得なかった。 そのため2020年度は、それまで収集した資料を整理し、データ化し、活用することに努めた。しかし、資料の再確認や追確認の作業が出来なかったため、限られた範囲での分析にとどまり、作業は滞った。十分な作業と分析をなし得なかったと立ち返る。 他方、2019年度以前の資料調査や実地踏査を踏まえて、その一部をデータ化し、部分的な成果としてまとめることが出来た。それは、長崎(浦上)原爆を撮影したフィルムから、特定の地点を確認し、現状の街並みを並置し、対比し、変化を読み取り、画像資料に被爆証言の文字資料を重ねる作業である。1画像に対し、多くは1頁の関連資料を付し、大凡、計2頁を1事例とした。それを積み重ねる作業を継続した。 その作業の成果の一部として、長崎市内の幾つかの被爆工場において、被ばく死をした鹿児島県出身者の死亡名簿から、個々の被ばくの場を特定し、列記する論考を纏めた。 当該の論考は、事後的であり、それ自体の有用性は限られている。しかし、あの時に、あの場で、ひとり一人の生があったのであり、その死の瞬間を、間接的にも確かめる資料を並置することで、また、その場での在り様に対する分析を列記することで、今日的な位置から、なし得るひとつの役割を果たしたと考える。分担者の協働し、そのような調査と作業と分析を継続する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
昨年度の研究計画では、年度末までに研究成果を纏める予定であったが、それをなし得なかった。 県境を越えた調査や踏査が困難であったことが主因である。社会的な困難が続く情況のなかで、本研究の全般にわたり、作業が滞る結果になった。 それは、収集した資料をデータ化し、分析するなかで、追確認や再確認が必要である場合が多かったことによる。例えば、長崎市内のJR九州浦上駅は被ばく地の中心に近い位置にあるが、鉄路の高架線架け替え作業に伴い、駅新築と大幅な改修が行われた。そのため、当該箇所などの画像の貼り替えが必要であるが、それをなし得なかった。 加えて、画像資料を、現在の長崎市内の実際と対照する作業において、長崎市内における野外踏査を行うことが出来ず、事実確定に至らない画像が幾つもあり、それらの作業が残された。 社会的に厳しい情況が続くなかで、本研究は対象地域が遠隔地であり、移動がかなわず、その困難を痛感した。計画の立案時、関連する項目の短期渡米調査(米国メリーランド州立大学図書館など)を考慮したが、結果的に研究計画に組み入れなかった。もし、そのような研究計画であったなら、更に厳しい情況に立ち入っていたかもしれないと振り返る。 直接的な資料を所蔵する公的施設において、それら所蔵資料を前にして、画像資料を分析できなかったことを主因に、本研究が遅れる状況になった。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、基本的に、これまでの研究姿勢を維持する。加えて、国立国会図書館などの文献等に拠り、分析内容などを再確認し、報告集の正確性を高める努力をする。 他方今年度も、昨年度同様に、県境を越えた調査が困難になるとも想像する。そのことに起因する困難は、主に、次の三項目である。1.東京都の国立国会図書館などにおける文献調査と再確認。2.広島県の公的施設における資料調査や文献確認やそれらの再確認。3.長崎県の公的施設における資料調査や文献確認やそれらの再確認、加えて、聞き書き調査や実地踏査や新規の画像収集。 その場合、これまで収集した資料を改めて整理し、その分析などに集中し、データ化作業などを進める。対象とする資料が明確な場合は、限定的な対応になると思われるが、文献複写を依頼するなどの手段を活用したい。しかし本研究は、研究領域や研究対象や研究項目が明瞭でない事例が多い。文献複写の依頼などによる新規の資料収集は、自ずと限界がある。 困難な情況は続くが、今年度末には報告集をまとめなければならない。報告集は、300頁か、それを越える分量になるものと想定している。出来る範囲のなかで、限られた資料などを活用し、最善を尽くすしかないと考える。
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Causes of Carryover |
2020年度は、調査項目などを事前に整えていたが、県境を越えた踏査を行うことが出来なかった。そのため、全般的に作業が滞ることになった。また、そのための旅費及び諸費用が次年度への持ち越しになった。 2021年度も、同様に、県境を越えた調査と踏査を予定している。社会的な動向を勘案しながら、その可能性を求める。しかし、社会的な状況次第では、2021年度も、県境を越えた踏査を断念することもあると想定する。その場合、本研究に関する諸出費や報告集作成に関わる経費として支出する。
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Research Products
(1 results)