2017 Fiscal Year Research-status Report
児童文学におけるロビンソン変形譚の受容研究――「食」が示す「生きる力」の考察
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16K02431
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Research Institution | Kawaguchi Junior College |
Principal Investigator |
水間 千恵 川口短期大学, その他部局等, 准教授 (20591803)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 児童文学 / ロビンソン・クルーソー / 児童文化 / 日本文学 / 比較文学 / 英米文学 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度は、当初の研究計画に基づき、(1)純粋和製ロビンソン変形譚の歴史を明らかにすること、(2)成果の一部を国際学会において発表することおよび論文化すること、を中心に研究活動を進めた。 まず(1)については、野村長平および中浜万次郎をモデルにした子ども向けロビンソン変形譚の生成史を明らかにするため、高知県での資料収集を行った。創作読み物ではなく、伝説・昔話として地元で伝承されてきた物語の存在を確認し、活字化されたバージョンを複数入手できたことが大きな成果となった。また、高知県では、前年度に引き続き、純粋和製ロビンソン変形譚と捕鯨との関係について考察するための基礎資料も入手できた。 (2)については、児童文学カナダ・トロントのヨーク大学で開催されたIRSCL(International Research Society for Children's Literature)の第23回研究大会に参加し、中浜万次郎を主人公にした作品について研究発表を行い、海外研究者との意見交換を行った。また、野村長平を主人公とする変形譚に関しては、前年度の学会発表の内容に今年度の調査結果を取り込んで、論文化し公表した。 なお、これら以外に、(3)自費での海外渡航を含めて、女性を主人公にしたロビンソン変形譚についての資料収集を行い、文献の精査を進め、論文執筆に着手するとともに、(4)平成30年度の研究計画を念頭において、1960年代以降のアニメーション作品を中心に、子ども向けに視覚化されたロビンソン変形譚の収集も、精力的に行った。 また、平成29年度には、教員、保育者、保護者等、子どもの読書行動に影響を及ぼしうる大人を読者対象として想定した一般書(共著)を出版したが、そのなかで、担当項目においてロビンソン変形譚をとりあげて紹介した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度の研究結果を踏まえて、変更済みの内容以外はすべて当初の予定をこなし、研究成果の公表を行ったことに加えて、平成30年度の準備にも着手できたが、昨年度の期末時点で検討していた新たな調査内容(ドイツ語文献の精査)については次年度に先送りすることとなった。 3年計画全体としてみた場合にはおおむね順調といえる。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度においては、これまでの調査・研究成果をもとに、当初から目標に掲げていた「日本で出版された子ども向けのロビンソン変形譚の歴史をまとめる」作業を行う。資料収集や文献の読み込み作業がほぼ予定どおりに進行しているため、今後はこれ以上手を広げるのではなく、ここまでの個別の成果を公表しつつ、全体をまとめることに力を注ぐ。2年間の調査活動により得られた資料や情報が、当初の予想を上回るものになっているため、研究成果の公表については、年度内には、学会発表と学会誌への論文の応募を軸に据え、その後全体像のまとめを別途検討したい。 これに加えて、子どもの読書環境整備や読書推進に寄与するという観点から、教員、保育者、保護者等に情報提供するための方法を積極的に探っていく。
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Causes of Carryover |
残額は、絶版になった洋書の入手が遅れたことによるものであり、次年度に古書にて調達する予定である。
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