2016 Fiscal Year Research-status Report
近世京都雅文壇における身分的境界領域の人々を中心とした学術交流に関する総合的研究
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16K02434
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Research Institution | National Institute of Technology, Toyota College |
Principal Investigator |
加藤 弓枝 豊田工業高等専門学校, 一般学科, 准教授 (10413783)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 非蔵人 / 地下官人 / 小沢蘆庵 / 六帖詠草 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、近世期に身分的境界領域にいた人々(殿上で雑事に従事していた非蔵人や、昇殿の勅許を得ていない官吏・官人等)が関わった出版物や、遺した和歌資料や日記類を調査・分析することで、身分を超えた文化交流の変遷を解明するとともに、その文学史的意義を明らかにすることを目的とする。 平成28年度は、基礎的資料の整理の一環として、静嘉堂文庫蔵『六帖詠藻』(写本、全50巻47冊)に登場する人名収集を主に行った。当該資料は、江戸時代中期に京都を中心に活躍した歌人小沢蘆庵(1723~1801)による、未定稿の自筆家集である。この自筆本は、約40年に及ぶ歳月の間に蘆庵ならびにその周辺人物によって詠出された膨大な歌が、おおよそ年代順に排列されており、さらに詞書が詳細であることから、歌日記的家集であるとも称されてきた。 この自筆本には、上田秋成・伴蒿蹊・橘千蔭・本居宣長・村田春海・妙法院宮真仁法親王をはじめ、当代を代表する歌人や文人たちが登場する。それに加え、現在ではその存在は埋もれてしまっているものの、堂上と地下、文壇と画壇、雅文学と俗文学などの間で、越境的交流の橋渡し役を担った人々の実態をもうかがうことができる。つまり、この家集は近世中後期上方文壇の解明にも資すると言える。 整理の結果、身分的境界領域にいた人々を含む、約750名の和歌営為を把握することができた。また、彼らの和歌営為の実態に関する論文を、蘆庵文庫研究会編『小沢蘆庵自筆 六帖詠藻 本文と研究』(和泉書院、2017年)に掲載した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
小沢蘆庵自筆の『六帖詠藻』(静嘉堂文庫蔵)に登場する人名の整理によって、今後の研究に益する基礎的データを作成することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、初年度に収集したものを基盤として、各種データを作成する。具体的には、(1)地下官人略伝の収集、(2)禁裏御書物所の出版年表の作成、(3)非蔵人や地下官人による身分を超えた学術的交流の実態解明、以上3点を通して、近世京都雅文壇において身分的境界領域の人々が果たした文化的役割が、時代によってどのように変わっていったかについて、総合的に検討する。
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Causes of Carryover |
平成28年9月より、産休ならびに育休を取得し、研究を一時中断したため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成30年度に平成28年度の残額を使用する計画である。育休に伴い、今後の研究計画は変更せざるを得ないが、最終的には当初の研究内容を遂行できるような計画を現在構築中である。
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