2019 Fiscal Year Annual Research Report
Possibility of Aesthetics: Beyond the Critique of Aesthetic Ideology
Project/Area Number |
16K02439
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
大河内 昌 東北大学, 文学研究科, 教授 (60194114)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 美学 / イデオロギー / 道徳哲学 / 政治経済学 / ディコンストラクション / 虚構論 / 美徳 / 商業社会 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究計画の最終年度である令和元年度は、これまでにおこなった研究の脈絡を明確化し、研究全体の整合性を確認し、本研究の意義と独創性を明確化することに重点を置いた。また、本研究以前に科学研究費補助金をうけて実行した研究を本研究とつなぎ合わせ、それらの研究の意義を新しい光の下でより意義深いものとすることもできた。本年度はとくに、バーナード・マンドウィル、フランシス・ハチソン、ケイムズ卿らの美学論を、「趣味論」という観点から再検討し、彼らの美学理論をシャフツベリーとデイヴィッド・ヒュームの間に置いて、彼らの思想史的意義を再検討した。また、ヒュームの『人間本性論』に含まれる虚構に関する理論を再検討し、認識論的な観点からだけでなく、政治的・経済的な文脈に置き直して、そのイデオロギー的な意味を浮き彫りにした。ヒュームの虚構論の意義を端的に言うなら、商業化した社会における市民の行動原理を具体化したものなのである。近代的な商業社会は表象と虚構が溢れる社会である。虚構との付き合い方を知らない人間はそこで生き残ることができない。市民は、想像力を洗練させることによって、はじめて市民社会でうまく生きることができるのだ。この想像力の洗練という問題はロマン主義文学でも大きな問題となる。本年度は本研究の成果を総括的にまとめ『美学イデオロギー―商業社会における想像力』(名古屋大学出版会)として出版することができた。これは科学研究費補助金を受けて実行した研究を広く社会に還元することを目的に出版したものであり、本研究は順調に進捗し、成功裏に完成したと言える。また、上記の学術書の出版にあたっては日本学術振興会令和元年度科学研究費補助金(研究成果公開促進費「学術図書」)の交付を受けたことを付記しておく。
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