2018 Fiscal Year Research-status Report
F・ポルトゥス他による古典翻訳の英国初期近代詩人の神話創造への影響
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16K02443
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Research Institution | Ochanomizu University |
Principal Investigator |
清水 徹郎 お茶の水女子大学, 基幹研究院, 教授 (60235653)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | ホメーロス / シェイクスピア / ラテン語訳 / ポルトゥス / 比喩 / 神話 |
Outline of Annual Research Achievements |
2018年度はシェイクスピア『ソネット集』およびその同時代の詩・演劇テキストにおけるイメージと比喩表現を、古代叙事詩(ホメーロス他)の16世紀ラテン語訳テキストに現れるイメージ・比喩表現と比較する作業を中心に研究計画を進めた。 分析対象とした具体例としては、叙事詩に伝統的に見られる冥界/地獄のイメージと比喩表現、音楽・歌唱をイメージする比喩表現などである。本研究では比喩表現の中でも特にメトニミー(換喩)に注目し、詩的伝承によるメトニミーと因習的・日常的発想によるメトニミーとの両者の関係を再考・換骨奪胎する営みとして、初期近代の詩と演劇的言語に注目する。その最も高度に洗練された例の一つがシェイクスピアの『ソネット集』製作であったことを検証する作業を続けた。 本研究でメトニミー(換喩)に注目した理由は、従来の詩的言語の研究ではメタファー(隠喩)とシミリー(直喩)の分析がほとんどであり、メトニミー分析についてはあまり進んでいなかったからである。近年進展の著しい認知言語学におけるメタファー/メトニミー研究の成果も取り入れて援用し、さらに本研究計画を進める。 2018年度はまた上記の作業と併行して、古典文学翻訳/印刷文化黎明期におけるルネサンス造形芸術(例:ミケランジェロとその追随者)における神話伝承・書き換え・創造の例についても調査を行った。 今後の計画としては、ラテン語訳ホメーロスという伝承経路に加え、ウェルギリウス、ダンテ等の伝承経路も改めて比較考察し、さらに検証を試みたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
神話創造としてのシエクスピア『ソネット集』解釈は一義的には行かない。メトニミーの分析が進む一方で、それを詩解釈と結びつける際には恣意的判断が多分に入り込まざるを得ないため、実証的意味で結論を出すにはより多くの検証手続きが必要となるであろうから。
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Strategy for Future Research Activity |
ラテン語訳ホメーロスと初期近代英詩との比較検証作業をさらに進めるとともに、ダンテ、チョーサー等の中世文学、造形芸術などの伝承も比較の視野に入れつつ、伝統と新しい神話創造の問題を考察する。
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Causes of Carryover |
2018年度末に調達を予定していた資料(図書)の刊行が遅れたため、その購入予算分が未使用となったため。次年度にあらためて同資料を調達する計画である。
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Research Products
(2 results)