2016 Fiscal Year Research-status Report
ウェールズ英語文学の研究─二〇世紀産業小説とナショナリズム・共同体
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16K02444
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
河野 真太郎 一橋大学, 大学院商学研究科, 准教授 (30411101)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 英文学 / ウェールズ文学 / 産業文学 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年4月から9月までは、英国・ウェールズのスウォンジー大学Richard Burton Centre Fellowとして在籍し、本研究課題についての研究を進めた。同大学のRaymond Williams Archiveでの資料調査を行うほか、4月にはウェールズ英語文学学会(the Association for Welsh Writing in English)の年次大会に参加し、Raymond Williamsの小説作品Loyaltiesをめぐる研究を口頭発表した。Raymond Williams Archiveでは、ウェールズ出身、イギリスの著述家であるレイモンド・ウィリアムの、とりわけCulture and Societyに関連する資料を調査し、本書に収録されなかった章の草稿などを検討することができた。また、同期間中には、ウェールズの産業文学小説家であるLewis Jonesについての研究を進め、これは平成29年または30年にケンブリッジ大学出版局から出版されるイギリス文学史の一章となる予定である。 平成28年9月に帰国した後には、Lewis Jones研究を継続しつつ、1930年代ウェールズ文学についての研究を継続した。この期間に特に研究したのは、How Green Was My Valleyの作者として有名なRichard Llewellyn、ウェールズ語作家のKate Robertsである。同時に、ウェールズ文学における短編の研究も進めた。Gwyn Thomas, Caradoc Evans, Alun Lewis, Margiad Evans, Dorothy Edwards, B. L. Coombs, Rhys Daviesなどの短編の研究に着手した。 全体として、これまで日本ではほとんど研究の進んでいないウェールズ文学について、部分的ではあれある程度の深い研究が遂行できたと言える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題では、ウェールズの特に20世紀の小説とその作家を、ウェールズの歴史や社会を文脈として総合的に研究していくことをめざしているが、本年度はとりわけ、時代としては二つの大戦間期、特に1930年代のウェールズ文学とその背景となる歴史の研究が進捗し、また本研究の軸となるレイモンド・ウィリアムズ研究も順調に進捗した。 20世紀のウェールズ文学の全体像を明らかにしていくという目的からすると、研究の最終目的にはまだ遠く及んでいないと言わざるを得ないが、一年間に進捗させるべき研究としては順調な進捗であると言えるだろう。
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Strategy for Future Research Activity |
以下のいくつかの分野についてそれぞれ研究を進めていく。 (1)レイモンド・ウィリアムズ研究。主に小説作品について、これまで論文を書いていない作品についての研究を進める。The Second GenerationやThe Fight for Manodについて研究する予定である。 (2)1930年代ウェールズ文学についての研究を掘り下げる。Gwyn ThomasやGwyn Jones, Margiad Evansについての研究を進める。 (3)20世紀後半から現代にかけてのウェールズ文学について、おおまかなパースペクティヴを得られることを目指して研究を開始する。 以上の目的を達成するために、文献研究はもちろん進めつつ、平成29年5月に開催されるウェールズ英語文学会(the Association for Welsh Writing in English)の年次大会に参加する。
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