2016 Fiscal Year Research-status Report
学際的なライフ・ライティングの枠組みで捉えるメタバイオグラフィーの系譜の研究
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16K02446
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
星 久美子 信州大学, 人文学部, 特任准教授 (20572142)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | ライフ・ライティング / メタバイオグラフィー / メタバイオグラフィカル・フィクション / バイオフィクション |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、近年、注目されてきている、学際的・分野横断的ライフ・ライティングの枠組みの中で、従来の伝統的な伝記とは異なる「メタバイオグラフィー」を系譜的に研究することを主目的としている。初年度(平成28年度)は、上半期・下半期を通じて、「メタバイオグラフィー」の定義を明確にした。すなわち、「メタバイオグラフィー」とは、「ジャンルが曖昧である」、「ファクトとフィクションの境界が曖昧である」、「バイオグラフィーを書くという行為について自己言及的である」、そして「バイオグラフィーの対象よりバイオグラフィーの著者についてより多くが明らかにされる」という特徴を有する。この定義に基づき、「メタバイオグラフィカル・フィクション」の研究を開始した。まず、「メタバイオグラフィカル・フィクション」の誕生に大きな影響を与えたと思われるヴァージニア・ウルフの『フラッシュ(Flush)』(1933)について、とくに「ジャンルの曖昧性」、「ファクトとフィクションの融合」、「自己言及性」の観点から考察し、平成28年8月31日(水)から9月2日(金)にかけてカーディフ(英国)で行われたThe British Association for Victorian Studies主催の国際学会において東京女子大学准教授ニール・アディソン氏と同非常勤講師中妻結氏とともにパネル発表を行った。また、ヘレン・ダンモアの『暗黒のゼナー(Zennor in Darkness)』 (1994)について、とくに「ファクトとフィクションの融合」と「間テクスト性」の観点から考察し、平成28年9月12日(月)から14日(水)にかけてセント・アイブズ(英国)で行われた国際学会において口頭発表を行った。さらに、平成27年6月にガルニャーノ(イタリア)で行われた第13回国際D・H・ロレンス学会での口頭発表の原稿を大幅に改訂し、日本英文学会中部支部に投稿、日本英文学会支部統合号に掲載された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請時に予定した研究計画をほぼ遂行している。すなわち、「メタバイオグラフィー」の定義を明らかにした上で、ふたつの国際学会で口頭発表を行うことができた。さらに、同テーマに関して一本の論文を発表することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度は、平成28年度に行ったふたつの口頭発表の原稿を大幅に改訂し、論文として学会のプロシーディングズ、あるいは国内外のジャーナルに投稿する予定である。同時に、「バイオフィクション」の研究も開始する。平成29年7月にロンドン(英国)で開催予定の第14回国際D・H・ロレンス学会では、第一次世界大戦中、ゼナーに滞在していたD・H・ロレンス夫妻とキャサリーン・マンスフィールドとJ・M・マリーの交流を描いた演劇三本--Amy Rosenthal, On the Rocks (2008), Robert Fraser, Bugger the Skylarks (2010), Tennessee Williams, The Night of the Zeppelin (2015)--を比較し、それぞれの特徴を明らかにする。さらに、夏期休暇などを利用して、情報収集と意見交換を目的に、Centre for Life-Writing Research (King’s College London)とOxford Centre for Life-Writingが主催する学会やセミナー、MLA年次総会の「バイオフィクション」のセッションなどに参加する予定である。
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Causes of Carryover |
当該年度に予定していたPCの購入を次年度に延期した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度請求額と合わせて、PCを購入する予定である。
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