2018 Fiscal Year Annual Research Report
The Historical and Cultural Historical Research on the Dietary Literature in Early Modern Englnad
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16K02447
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
滝川 睦 名古屋大学, 人文学研究科, 教授 (90179573)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 食事文学 / 近代初期英国 / シェイクスピア / 『アテネのタイモン』 / 宮廷仮面劇 / 自己の生成と消失 / 歴史的・文化史的研究 / 都市と森 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度の研究実績は以下のとおりである。(1)シェイクスピアの『から騒ぎ』やアンソニー・マンディー他の『サー・トマス・モア』、ジョン・ミルトンの『楽園喪失』をはじめとする、これまでに分析対象としなかった近代初期英国における食事文学を分析し、その諸相をデータベース化した。(2)古代ギリシア・ローマ時代から近代初期に至る汎ヨーロッパ的な食事文学のコンテクストの中で、近代初期英国の食事文学を分析した。(3)前年度にカヴァーしきれなかった、近代初期英国における生理学、健康学、栄養学などの学問領域における一次資料と食事文学との関連性を歴史的・文化史的視座から解明した。(4)現代のエコクリティシズムの視座から、近代初期英国の食事文学と当時のエコシステムの関連性について研究した。(5)シェイクスピアの『アテネのタイモン』を近代初期英国の食事文学の視座から分析した。とくに、都市空間から森への舞台転換によって生成される演劇的二項対立が、カニバリズムのイメージによって脱構築されることを解明した。さらに劇に浸透する宮廷仮面劇のイメージが、当時の宮廷におけるバンケット(饗宴)、とくにそこで消費されるヴォイド(菓子・嗜好品)のイメージとスーパーインポーズされることによって生じる、タイモンをはじめとするアテネ市民の「自己」消尽のプロセス、そして本来、宮廷仮面劇が演じられる都市空間と対立関係にあるはずの森が、本劇においては宮廷仮面劇的舞台空間に変貌していくダイナミックスを解明した。(6)近代初期英国における食事文学の諸相、食事文学と食事文化との相関性、食事文学と自己の成立・消失との関連性などに焦点を合わせて研究期間全体の総括を行った。
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