2018 Fiscal Year Research-status Report
読む行為を贈与として捉える可能性と意義についての基礎的事例研究
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16K02451
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
宮原 一成 山口大学, 人文学部, 教授 (10243875)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 贈与論 / 現代英語小説 / 読み行為 |
Outline of Annual Research Achievements |
本来の最終年度に当たるため、研究成果の公表に力を注ぎ、学会における口頭発表と、それをもとに学術論文を制作・発表する活動を行った。2018年8月31日テクスト研究学会第18回大会(佛教大学)と、同年10月27日に日本英文学会中国四国支部大会第71回大会(鳥取大学)の場で単独発表の形で口頭発表を実施、その後、前者はテクスト研究学会の学術雑誌である『テクスト研究』第15号に掲載された「1つに重ねた読む行為の記録―イアン・マキューアン作『贖罪』第1部における誠実さ」と題する論文(査読あり)に結実し、後者は大幅加筆の上、論文「赦されるのは時間の問題 ―Ian McEwanのAtonementにおける時系列の印象操作」となって、『山口大学文学会志』第69巻に収録された。ともに2019年3月の発行である。贈与交換の考え方と極めて密接に結びついている赦し・贖罪のテーマを、読み行為に結びつけるアプローチの具体的事例研究を、時系列問題に目配りしながら小説作品を精読する試みを二通り実践してみせた。その中で、読み直しの反省的反復という倫理の問題と、贈与のお返しや罪滅ぼしという埋め合わせにどれほど時間を掛けるべきかという倫理問題の重要性を浮き彫りにした。 結果的に2018年度は、現代英国人作家マキューアンの作品のみに注意を集中する形の成果報告となったが、別の作家による小説の研究論文と、また他の作家の作品7本を扱う「研究序説」のような論文も、9割がた書き終えている。しかしこちらは残念ながら発表に至らなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
突発的な形で校務の作業量が増大したことが計画の進捗に大きく影響した。
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Strategy for Future Research Activity |
幸い、本研究計画の一年間延長を認めていただき、また勤務校を替わったため、2018年度に担っていた校務から解放されたこともあるので、見送ることになった成果発表活動を推進する。具体的には、現代英国人作家サリー・ルーニーの小説『ノーマル・ピープル』についてテクストの贈与交換の見地から考察した論文を、PALA(国際文体論学会)の場でまず口頭発表することを目指す。これは発表申し込みがすでに受理されている。また、数作品を扱いながら研究を総括する「研究序説」的論文も、いずれかの場で論文として公表する予定である。
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Causes of Carryover |
校務が多忙になり、計画していた海外の国際学会における研究発表を見送らざるを得なくなり、それに関する費用の一式が未使用となって終わった。2019年度に改めて国際学会で口頭発表をする計画を立てており、次年度使用額はこの学会への渡航航空券代に充てる予定である。
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Research Products
(4 results)