2017 Fiscal Year Research-status Report
初期近代英国演劇における「合作」に関する研究――印象批評とコンピューター解析
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16K02452
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
太田 一昭 九州大学, 言語文化研究院, 学術研究者 (10123803)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | シェイクスピアの共作 / 文体統計解析 / 計量文体論 / コンピューター解析 / 改作 / 偽造 / Double Falsehood / Edward III |
Outline of Annual Research Achievements |
3件の口頭発表を行い、3件の原著論文を公刊した。 [口頭発表](1)「Jonathan Hopeの著者同定研究の功罪」(ホープの作者同定研究を評価しつつ、解析方法の作者弁別力を過信することの危険を指摘した。)(2)「Double Falsehoodの『原作者』は同定されたのか」(『二重の欺瞞』の原作者としてシェイクスピアの同定に成功したかのような議論を展開している論考を検証し、ティボルドによる偽造を否定する統計学的解析の問題点を指摘した。)(3)「シェイクスピア研究と本文編纂」、シンポジウム「Drama, Theater, Performance & Beyond――演劇研究の諸相」(シェイクスピア劇の本文編纂が編者のイデオロギーといかにかかわっているかを、『オセロー』と『あらし』の本文編纂の例を引いて論じた。) [原著論文](1)“Edward III and Statistical Attribution Studies”(Edward IIIに関する統計学的作者同定研究を総括した。コンピューター解析は作者同定研究の有力なツールとして大きな可能性をもっているが、適切な比較対象群の設定、解析結果のクロスチェックが不可欠であること、解析の生データの開示が必要であることを力説した。)(2)「ジョナサン・ホープの作者同定研究の功罪」(口頭発表論文「Jonathan Hopeの著者同定研究の功罪」に基づく。)(3)「『二重の欺瞞』の作者同定と文体統計解析」(『二重の欺瞞』の文体統計解析による作者同定論考について否定的な見解を提示した。この劇の作者同定に統計解析を導入しても十分な成果は期待できない。というのも『二重の欺瞞』は、「原作」が存在したとしても、改作者によって上書きされている可能性が高く、統計解析のための適切な言語データを抽出することが非常にむずかしいからである。)
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
関係資料の収集、研究発表、論考の執筆はほぼ計画通りに進んでいる。1550年頃から17世紀中葉までに創作された戯曲の電子テクスト・データベースの構築も順調に進んでいる。2017年3月末時点で、現代標準綴りテクスト535編、原綴りテクスト786編の電子データを収集した。
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Strategy for Future Research Activity |
30年度は、これまで収集した電子テクスト・データベースに修正を施し、コンピューター解析の資料として信頼度の高いデータベースの構築をめざす。この作業と並行して、Arden of FavershamあるいはLearの共作問題の検証作業を始める予定である。
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Causes of Carryover |
図書購入費、学会出張旅費の支出が予定より少なく、残余が生じた。30年度は当初の計画に沿って、物品費(研究図書購入等)、旅費(学会・研究会参加旅費)、論文校閲料その他に使用する予定である。
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Research Products
(6 results)