2017 Fiscal Year Research-status Report
ジョン・キーツの詩論と自然観に対するピクチャレスクの影響について
Project/Area Number |
16K02454
|
Research Institution | Saga University |
Principal Investigator |
江口 誠 佐賀大学, 全学教育機構, 准教授 (50332060)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | ピクチャレスク / ロマン主義 / イギリス文化研究 / キーツ |
Outline of Annual Research Achievements |
まず、本研究はイギリス・ロマン派詩人ジョン・キーツの詩におけるピクチャレスクと呼ばれる美的範疇の影響を解明することにある。平成29年度は、前年度に引き続き18 世紀から19 世紀に出版されたピクチャレスクに関係する文献の収集に専念した。その作業と並行して、多くの研究成果が確認されているウィリアム・ワーズワスとピクチャレスクに関する論文を精読することで、本研究の最も重要なテーマであるキーツとピクチャレスクとの関係を考察する上での参考とした。同時にジョン・キーツの詩と彼の書簡を、今度はピクチャレスクという視点から再度精読し、得られた研究成果を基にピクチャレスクがキーツに与えた影響について考察した。 その結果、平成29年度の研究成果として、研究論文「キーツの自然観とピクチャレスク」を上梓することができた。本論文では、主としてキーツの詩における自然とピクチャレスクの影響を検証した。まず、18世紀初頭から19世紀初頭における崇高、美、そしてピクチャレスクの概念をそれぞれ概観し、その後、ピクチャレスクの概念がどのようにキーツの自然観に影響していたのかを検証した。キーツは明らかにピクチャレスクの信者の一人であり、彼の友人とのスコットランドの徒歩旅行はある種のピクチャレスクツアーとして見なすことができる。実際、彼が多くのピクチャレスク的な場所を訪れていることがその証左である。最後に、キーツの幾つかの詩におけるピクチャレスクの影響について検証した。彼の1818年のスコットランドツアーの目的は、彼の詩の範疇をそれまで以上にさらに広げようとするものであった。結局のところ、キーツが熱心に信仰していたピクチャレスク的な概念は徐々に退けられ、代わりに彼が慣れ親しんでいたイギリス南部の風景や土着の言葉の重要性を再認識することになったのではないかと結論づけた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
資料収集及び文献の精読、研究成果の発表については概ね順調に推移している。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成30年度は、前年度に引き続いてピクチャレスクに関する資料収集を行うが、最終年度でもあるため、総まとめとしての成果発表ができるように研究成果をまとめたい。
|
Causes of Carryover |
図書費の購入額が予定していた額よりも少なくなったため次年度に繰り越すことになった。
|