2018 Fiscal Year Annual Research Report
Madness and Forgiveness in Joseph Conrad and Rene Magritte
Project/Area Number |
16K02457
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Research Institution | The University of Shiga Prefecture |
Principal Investigator |
山本 薫 滋賀県立大学, 人間文化学部, 准教授 (50347431)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | ジョウゼフ・コンラッド / シュールレアリスム / 狂気 / マグリット / 赦し / 西欧 / アラブ / デリダ |
Outline of Annual Research Achievements |
<研究の具体的内容> 本研究は、ジョウゼフ・コンラッドのデヴュー作『オールメイヤーの阿房宮』(Almayer's Folly)と、シュールレアリストの画家ルネ・マグリットの同名の絵画(La Folie Almayer)に共通して見られる狂気(folie/madness)への関心を、従来批評家たちが論じてきた主人公オールメイヤー個人の愚かな行動(英語folly[愚行]や狂気(仏語folie[狂気])という観点からではなく、フランスの思想家ジャック・デリダの言う「狂気」としての「主権なき赦し」という観点から他者(つまり共同体)の問題として考察することにより、『オールメイヤーの阿房宮』をアラブとヨーロッパの対立と和解の可能性を探求する物語として再読した。
<研究の意義、重要性> 個人の愚行という意味でははっきりと描き切れていないと非難されてきたために長く習作として過小に評価されてきたコンラッドのデビュー作『オールメイヤーの阿房宮』を、植民地の西欧人個人が活躍する東洋的異国情緒に満ちた19世紀の冒険物語の一種としてではなく、ヨーロッパ大陸の思想、特にジャック・デリダの「赦し」と(不)可能な和解の概念に依拠しながら、現代の国際社会の緊急の課題である(特に西欧とアラブ世界の間の)「赦し」の問題、つまり共同体の問題を先取りする革新的な物語として再評価した。ヨーロッパ大陸における他者の思想、つまり共同体論を頼りに西欧の近代的自我という観点からばかり論じられることで長く失敗作とされてきた『オールメイヤーの阿房宮』の新しい読みの可能性を開くとともに、それが西欧的(キリスト教圏)世界とアラブ、イスラム教圏の和解の問題という時事問題を先取りしていることを明らかにした。
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Research Products
(3 results)