2016 Fiscal Year Research-status Report
コロニアルな視線の順応化―ロマン派期英国アイルランド小説再評価
Project/Area Number |
16K02459
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Research Institution | Gakushuin University |
Principal Investigator |
吉野 由利 学習院大学, 文学部, 准教授 (70377050)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | イギリス文学 / アイルランド文学 / ジェイン・オースティン / 家庭小説 / 国民小説 / 正典 / 受容 / 文学史 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、基盤研究C(課題番号25370276)の成果に基づき、再評価が進むロマン派期英国・アイルランド小説の体系化を補い、文学史を修正することである。ロマン派期の文学史修正は着手されているものの包括的とは言い難く、特に、ジェイン・オースティンの位置付けに関して議論が続行している。オースティンの作品はロマン派期小説の正典として再定義される一方、基幹サブジャンルである国民小説との間テクスト性の検証には議論の余地がある。本研究は、オースティンのイングランドの家庭を舞台の中心とした小説が、「ケルト辺境」でリアリズムとロマンスを混在させる国民小説のコロニアルな視線を順応化することで、帝国の拡大に伴い理想的国民像の再定義を必要とする時代の要請に巧みに応えていること、さらには、その特徴が作品の正典化につながっていることを独自に示す。 初年度に当たる平成28年度は、予定通り、コロニアルな視線に関する理論的理解を深め、Northanger Abbey (1817) とSense and Sensibility(1811)を読み直した。コロニアルな視線に関しては、特に、19世紀後半の在インド英国女性の著したテクスト、および在インドの英国女性の表象を扱うSusmita Roye and Rajeshwar Mittapalli編の論文集に集められた方法論と知見に注目し、本研究に応用する際の方法論的修正を検討した。また、Northanger AbbeyとSense and Sensibilityの読み直しに関しては、近年のAusten批評の動向を再確認しつつ、ヒロインの視線に潜むリアリズムとロマンスの作用を分析することを重視した。研究成果の一部を、雑誌論文1編、共箸1点、口頭発表2件で発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
校務多忙のため海外資料調査を平成29年度に延期することにしたが、国内で入手した資料の分析からでも方法論的な理解を一定度深めることができ、一次資料の再読でも新たな観点を得ることができたため。また、研究成果の一部を複数の機会で公表し、全国主要図書館のレファレンス係を対象とした講演も含んだため、広く社会へ発信することができたと考えられるため。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度は、海外資料調査を冬期に実施する。また、主な研究対象作品としては、Pride and Prejudice (1813)とMansfield Park (1814)を扱う。平成30年度はEmma (1815)とPersuasion(1817)の読み直しを行い、平成31年度に研究の総括を行う。研究成果は随時国内外の口頭発表や論考にまとめ投稿を行う。
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Causes of Carryover |
海外資料調査を平成29年度に延期したため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
海外調査を平成29年度冬期に実施する。
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Research Products
(4 results)