2020 Fiscal Year Annual Research Report
Predestination and Free Will in Middle English Religious Writings
Project/Area Number |
16K02460
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
松田 隆美 慶應義塾大学, 文学部(三田), 教授 (50190476)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 中世英文学 / 予定説 / ヨーロッパ中世写本 / 自由意志 |
Outline of Annual Research Achievements |
中英語宗教文学における予定説の解釈と受容に関する研究の総括として、中世英文学の素材となっているラテン中世の予定説-アウグスティヌス、ボエティウス、トマス・アキナス、ブラッドワルディン-について、中世英文学作品における具体的言及に触れつつまとめるとともに、本研究の中心を占める、13 世紀後半~16 世紀初頭の中英語の宗教文学作品における予定説および自由意志に関する記述を分類整理した。また、14世紀において独自の予定説を展開している、ウィクリフとJulian of Norwichについてもその論点を明らかにした。 中英語宗教文学における受容とその神学的背景に関しては全体像が見えたので、中英語のナラティブ文学にも調査対象を拡大し、期間延長をした2020年度においても、中英語のナラティブ作家における予定説の活用の可能性について研究を進めた。特にジェフリー・チョーサーにおける予定説の受容について、具体的な言及が認められる"The Nun’s Priest’s Tale"やTroilus and Criseydeに加えて、The Man of Law’s Taleの構造と語りの視点に注目して、典拠作品であるNicolas Trevetの年代記と比較しつつ論じた。その結果、チョーサーが本作品において、Troilus and Criseydeにもましてボエティウスの予定説を活用していることが明らかになった。加えて、The Man of Law’s Taleにおいて、チョーサーは、典拠作品にはない占星術による吉兆占いに触れて運命の不可知性に言及することで、一般信徒にとって難解な、予定と自由意志の表面的矛盾の問題に対して、まさにひとつの回答を提示していることを明らかにした。
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