2016 Fiscal Year Research-status Report
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16K02465
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Research Institution | Teikyo University |
Principal Investigator |
松永 典子 帝京大学, 理工学部, 講師 (00579807)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | フェミニズム / 自伝 / 伝記 / ケア労働 |
Outline of Annual Research Achievements |
本課題の主たる目的は、おもに1960年代後半から80年代前半に政治的文化的影響を与えたフェミニズムの主張が、ナショナルかつグローバルな文脈において変容する過程を系譜的に捉えることによって、その批評的可能性を明らかにすることである。そのために社会運動における発信方法としての自伝および自伝的手法に注目し、第一波フェミニズムから今日のフェミニズムにいたる女たちの著作を考察する。とくに近年注目される「ポストフェミニズム」をめぐる議論を静的というより動的にとらえ、フェミニズム理論研究への寄与の可能性を模索する。平成28年度におこなったのは、おもに次の五点である。これらは研究成果発表と文献調査に大別される。 研究成果の発表に関しては、第一に、20世紀の女性文学としての系譜学を、自伝を中心に考察し、所属学会から発行された論文集にて編者を務めるとともに論文を発表した。第二に、19世紀との関係から20世紀を考察するために、20世紀前半の女性文学の系譜を考察し、口頭発表をおこなった。第三に、所属学会の特集号の責任編集者を務めるとともに、福祉国家開始前から冷戦期にいたるまでの女性のケア労働を理論的に分析し、論文を発表した。 上記の研究成果発表とともに文献調査をおこなった。まず、研究の進捗に伴い、文献収集先を英国だけでなく米国にも発展させ、ロサンゼルスで資料調査をおこなったことが本年の実績の四点目である。英米を比較させることで新たな視座を得た。第五点目として、国内において関心を共有する研究者とフェミニズム関連の読書会を実施し、女性と社会・女性と運動についての文献を検討した。 以上5つの点が当該年度の実績の概要である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
最大の課題であった2本の論文執筆(いずれも編集担当を含む)および研究発表1本を無事に終えることができた。また、次年度に続く基本文献研究についても定期的に読書会を開催し、当該課題について関連分野の文献を継続的に読むことができている。以上二点の理由によって、おおむね順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度においては、本研究課題の年度の計画に従って実施する。 具体的には、第一に作品分析、第二に理論研究の継続、第三に国内学会への参加によって見地を深めること、第四に資料集のために渡英調査の実施、第五に論文執筆をおこなう。これらに加えて、本件の一部を含む研究成果を博士論文として発表することを新たな研究課題として組みこむ。
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Causes of Carryover |
本年度は予定以上に論文執筆に時間を要したこと、また、勤務先での仕事の都合上、海外での調査の日程を短縮したため、次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度の使用額が生じたが、これについては、次年度に必要な調査をおこなうために物品の購入および旅費として使用する予定である。
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