2016 Fiscal Year Research-status Report
シェイクスピアの作品とその受容に関する根源的表象分析
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16K02470
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Research Institution | Nagoya University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
高田 康成 名古屋外国語大学, 現代国際学部, 教授 (10116056)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 超越 / 自然 / シェイクスピア / 喜劇 / キリスト教 / 異教 / 終末 / 時 |
Outline of Annual Research Achievements |
「自然・本性」対「超越・絶対」という西洋文化に根源的な二項対立を基軸としてシェイクスピアの作品群を分析することにより、その作品世界の座標軸を明確化しようとする試みの第一弾として、本年度はThe Comedy of Errorsを分析対象として取り上げた。「超越・絶対」の局として明白なのは、新約聖書なかんずくパウロ書簡への言及箇所であり、それらは本質的に「時」の問題ないしイメージとの関連で現れる。とくに「ロマ書」や「エペソ書」に語られる終末観が作中に言及される場合、それらが作品全体の解釈にとってどのような機能を担っているのか、各々多丹念に考察した。そのさい、「時」の問題は、redemption(贖罪=時の買い戻し)という鍵概念に深く関連していて、とりわけあからさまには、旧アダムから新アダムへの着替というタイポロジーのモードに接続して行く。ここに特殊キリスト教的表象モードの問題が浮上し、シェイクスピアにとって、また同時に彼の時代にとって、タイポロジーという表象モードが如何なる文学的位置を占めていたかを考察した。「自然・本性」の局としては、キリスト教以前の異教ローマの表象モードにその典型がみられるが、それはまさにシェイクスピアが下敷き(種本)として利用したローマ喜劇のモードに他ならない。そこでは、超自然的なことが決定的な意味を以て現れることはなく、騙し騙しあいの「自然・本性」を基本とした表象モードである。こうして、プラウトゥスの隠然たる存在と、新訳旧約聖書にもとづくキリスト教的タイポロジーとの、対照がわれわれの課題の明確化に繋がることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新約聖書関連で、先行研究が濃密多大なため、やや手間取ってはいるが、同時に新たな発見もともなうので、おおむね順調と判断している。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画どおり、今年度はシェイクスピアの歴史劇に分析対象を移し、「超越・絶対」が如何に「歴史的な時」の次元に変換あるいは翻訳されて行くかを見定める。
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Causes of Carryover |
発注した書籍等が到着しなかったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
書籍購入
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