2018 Fiscal Year Research-status Report
環太平洋的/惑星思考的想像力が描くnaturecultureとしての環境表象研究
Project/Area Number |
16K02474
|
Research Institution | Ryukoku University |
Principal Investigator |
松岡 信哉 龍谷大学, 文学部, 准教授 (50351333)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
湊 圭史 同志社女子大学, 表象文化学部, その他 (10598527)
清水 万由子 龍谷大学, 政策学部, 准教授 (60558154)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | トランスパシフィック / 核表象 / 捕鯨 |
Outline of Annual Research Achievements |
2018年度は、本事業海外共同研究者クリス・リーガー氏を日本に招聘し、環太平洋、自然、ジェンダーなど本事業と密接に関係するテーマで、東京、名古屋、広島、福岡、大阪、京都の6都市において講演を実施した。東京ではリーガー氏の著書Clear-cutting Edenの内容を中心に、アメリカ文学における自然観について論じた。また日米比較の視点から、三島由紀夫とフォークナーの関係について論じた広島講演、さらに中国の作家莫言を先の両者に加え、より深く環太平洋のテーマから自然と女性の表象を掘り下げた大阪での日本アメリカ文学会関西支部での講演などを実施した。リーガー氏の大阪講演での発表内容は論文としてまとめられ、松岡による翻訳を経て、次にあげる共著にまとめられる。 松岡は共同編者の一人として、『トランスパシフィック・エコクリティシズム』(仮)の作成・編集に携わった。松岡は日米の核表象を比較した「終わりの後に」で、ドン・デリーロと大江健三郎について論じた。湊は環太平洋地域の捕鯨について論じる論文を、本著に寄稿している(目下編集中)。これらの本事業テーマと密接に関わる論考の作成に際しては、清水が環境科学の視点から示唆を与えた。 以上、リーガー、松岡、湊の3名は本事業テーマを様々な視点から論じ、その成果が一冊の本に集約されつつあることは大きな成果である。松岡は編者の一人であるが、本著は目下寄稿者からの原稿が集まり、編集作業の最中である。 加えて松岡は環太平洋のテーマを人種の観点から考察するために、文学作品におけるネイティブアメリカンの表象に着目した研究を進めている。本テーマに即してヘミングウェイとフォークナーを論じた発表をパリのヘミングウェイ国際カンファレンスで実施したことも大きな成果である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2018年度前半までは当初計画以上に進展している、の評価ができる良好な進捗状況であった。しかしながら研究代表者の体調不良により、評価は上の区分に見直しとなり、また2019年の見通しもやや不良である。ただ本事業計画にあげた海外でのパネル発表について、すでに申請採択済であり、海外共同研究者リーガー氏と研究分担者湊氏はともに参加が決まっている。また環太平洋の観点からぜひとも取り上げたい作家であったラフカディオハーンに関して、専門家のジョン・ドゥーギル氏にパネル発表に参加してもらうことになった。このことは、研究の進捗にとって良い材料である。松岡が日本作家の仏教的世界観との関わりで本事業研究テーマについて考察しているが、ドゥーギル氏の研究はこれとの相乗効果が多いに期待出来る内容である。 上に述べた通り研究代表者の体調不良により、一部計画通りに行かない部分が出ているが、可能な代替手段にて研究課題の考察は進めている。計画では環太平洋地域の自然観を探るため、石牟礼道子など日本作家の仏教的世界観を環境汚染の問題と絡めて論じることにしていた。これについては英文でのペーパーがすでにまとまっており、当初は上の国際カンファレンスで口頭発表する予定だったところを、印刷物での公表に変更する予定である。また参加予定だったカンファレンスについても、 スカイプでの発表、代読、recorded talkなどを学会事務局から提案されており、何らかの形の参加の道を探っている。 以上のようなことから、研究計画は概ね順調に進展していると言える。
|
Strategy for Future Research Activity |
上に述べたように、カリフォルニアでのASLEカンファレンスでのパネル発表が決定しており、研究代表者は体調不良により参加をキャンセルする可能性があるが、リーガー、湊の両名が、Polluted Paradise: The Nature/Culture Split in the Transpacific Literary Imaginationのタイトルのもと、ラフカディオハーンについて発題するJ.E.ドゥーギル氏とともにパネルを組んで参加予定である。また松岡は本パネルのためにすでに石牟礼道子についてのペーパーをある程度まとめており、学術雑誌等に発表することを計画中である。 四年計画の最終年度である本年については、研究計画書では、上記のASLE-USでのカンファレンスへ参加をし、フィードバックを得ること、またその結果を踏まえて、書籍の形で成果物を出すことが目標であった。その際にテーマは大きく二つに分かれ、一つは核の問題等環境汚染の問題、もう一つは宗教を含めたやや観念的な側面からアプローチする環太平洋の自然人間観である。リーガー氏、松岡、湊氏はそれぞれこれらのテーマに即した論考を書き上げ、その成果物である書籍『トランスパシフィック・エコクリティシズム』が今秋には公刊予定である。本事業の大きなイベントであったリーガー氏日本招聘とASLEカンファレンス参加の総括となる本書公刊をもって、本事業は予定通りの成果を収めて終了する予定である。
|
Causes of Carryover |
研究計画書通りに応募し無事採択されたASLE-USカンファレンス(カリフォルニア)につき、4名のパネリストの旅費等、十分な額を捻出するため、今年度分から次年度に一定額を繰り越すことにした。
|
Research Products
(7 results)