2017 Fiscal Year Research-status Report
1930年代のプロレタリア文学―階級、人種、ジェンダーの視点から
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16K02481
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Research Institution | Iwate University |
Principal Investigator |
齋藤 博次 岩手大学, 人文社会科学部, 教授 (90180801)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | プロレタリア文学の美学 / プロレタリア文学の多様な特質 / 欲望と労働 |
Outline of Annual Research Achievements |
プロレタリア小説の中で重要な位置を占めてはいるが、日本では評価が高くない小説、Agnes SmedleyのDaughter of Earth, Michael GoldのJews without Money, Jack ConroyのThe Disinherited, Robert CantwellのThe Land of Plenty, Grace LumpkinのTo Make My bread、Olsen TillieのYonnondio: From the Thirties、Nelson AlgrenのSomebody in Bootsなどを読み進め、それらを人種、階級、ジェンダーの視点で考察する作業を行った。特にSmedleyについては、学会発表を通して、Smedleyが貧困とジェンダーとセクシュアリティという3つの抑圧に抵抗する作家であったことを考察した。また、Jews without MoneyとThe Disinheritedを比較して、両作品における人種・民族の扱い方の相違を考察した。 それとは別に、プロレタリア文学を階級以外の観点から論じる新たな研究書を読むことで、プロレタリア文学研究に関して新たな知見を得ることができた。Daniel AaronのWriters on the Left, Barabara FolyのRadical Representations, Cary NelsonのRepresentation and Recovery, Paul RabinowitzのLabor and Desireなどである。特にBarbara FoleyのRadical Representationは、プロレタリア小説の美学と政治的立場の多様性を知るうえで役に立った。また、Paul RabinowitzのLabor and Desireは、1930年代の女性のプロレタリア作家が直面した「母性」や「労働」の問題について知ることができ、1930年代の女性作家を論じるための大きなヒントを得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本来の計画ではもっと多くのプロレタリア小説を読みこなすはずであったが、時間的制約があって、計画通りの読解ができなかった。また、The New Massesに載った批評や短編小説も読む予定であったが、これについても当初の計画は達成できなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
The New Massesが1920~30年代に果たした役割については、現在の研究の進度を考慮すると、十分に時間が取れない可能性がある。主要な関心は、1920~30年代のプロレタリア文学を階級的視点だけでなく、ジェンダーや人種の観点で読み解くことにあるので、そちらのほうに特化して研究を進めたい。8月までにプロレタリア文学に関する口頭発表と論文を予定しているので、それらを通して考察を深めたい。
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Causes of Carryover |
マイクロフィルムで購入を予定していたThe New Massesが買えなかったため。
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