2017 Fiscal Year Research-status Report
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16K02482
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Research Institution | Utsunomiya University |
Principal Investigator |
米山 正文 宇都宮大学, 国際学部, 教授 (80323319)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 19世紀米文学 / クーパー / 海洋小説 / ナショナリズム |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度の実績報告では3月より、クーパーの「水先案内人」の論文執筆に取り組んでいるとした。平成29年度はまず、その成果を、「「水先案内人」における国家像」(宇都宮大学国際学部研究論集第45号、2018.2. pp. 127-136)としてまとめた。この論文で明らかにしたのは以下の点である。(1)先行研究において、クーパーの「海のナショナリズム」に関する議論はどのように進んできたのか、(2)「水先案内人」におけるナショナリズムの脱構築(近年の批評動向の確認)、(3)上記テクストにおけるナショナリズムの再構築(応募者の解釈)、である。 平成29年度の後半は、「水先案内人」の研究をうけて、その後のクーパーの海洋小説「レッド・ロウバー(赤い海賊)」と「ウォーター・ウィッチ(海の魔女)」の2作品への読解と分析、先行研究の吟味を進めた。これまでに明らかになった点は、「水先案内人」と比較すると、徐々にクーパーがナショナリズムから疎遠になっていく過程が読み取れること、それは史実をもとにした「水先案内人」から、非現実的なロマン主義的海洋小説に移行していく過程と関連していること、1812年の対英戦争の余韻が徐々に無くなり英国との和解の雰囲気が表れ始めたこと、クーパーの関心は米国の「民主主義」、公的道徳(文化的な基盤となる宗教的倫理)へと徐々に移行していっているように見えること、である。 3月より、両テクストを対象として論文執筆を進めており、平成30年度に完成し、発表する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
ここ2年間で、クーパー前期の海洋小説はほぼ分析しえたが、後期の海洋小説にはまだ十分手がつけられていない。平成30年度の後半は、クーパー後期の海洋小説に取り組み、3年間の研究をまとめたいと考えている。 クーパーの小説は大部ゆえ、2作品を読解し分析するだけでも、予想以上に膨大な時間がかかっている。もう少し作品を取捨選択する必要があったと反省している。
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Strategy for Future Research Activity |
上記、実績の概要と進捗状況でも触れたが、平成30年度の前半は、平成29年度後半の研究成果をまとめ、発表する予定である。具体的にはクーパーの「レッド・ロウバー(赤い海賊)」と「ウォーター・ウィッチ(海の魔女)」の2テクストに関する論文をまとめる。 平成30度後半には、クーパー後期の海洋小説の読解をすすめ、前期小説と併せて、3年間の研究成果をまとめる。特に、後期作品で遺作ともなった「アシカ」(1846)を中心に分析を進める予定である。
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Causes of Carryover |
予定より安価なパソコンを購入したため。
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Research Products
(1 results)