2018 Fiscal Year Research-status Report
現代アフリカ系アメリカ女性作家によるネラ・ラーセンの抵抗の言語行為の継承と変奏
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16K02497
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Research Institution | Aichi Prefectural University |
Principal Investigator |
鵜殿 悦子 愛知県立大学, 外国語学部, 名誉教授 (00128638)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | アフリカ系アメリカ文学 / 人種 / ジェンダー / ネラ・ラーセン / ハーレム・ルネサンス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、2015年度までの科研費基盤研究(C)「1920年代アフリカ系アメリカ女性作家による抵抗の言語行為とその継承」で明らかになった成果を基礎とし、ハーレム・ルネサンスと呼ばれる1920-30年代のアフリカ系アメリカ文化運動において産出された文学と、現代アフリカ系アメリカ文学テクストとの影響関係について分析することである。とりわけネラ・ラーセンらによる文学的実践がいかに今日のアフリカ系アメリカ文学において変奏されつつ継承されているかを検証する。 三年間の研究年度を通じてテクスト、資料、研究書の読み込みを積み上げ、本年度の研究においては特にハーレム・ルネサンスに関する文献・資料の分析に力を注いだ。ハギンズ、ハッチンスン、ルイスら代表的論客の見解を再検討し、この運動の時代区分について検討し、従来言われてきた期間ではなく、1920年代後半から1930年代後半とすることが適切であることを検証しえたことの意義は大きいと考えている。研究の成果は、2019年4月の日本アメリカ文学会中部支部第三十六回大会におけるシンポジウム「ハーレム・ルネサンスとは何か」に反映させ、後に研究論文として、また近い将来単著書として発表する予定である。これに加えて、個々の作家のテクストや書物の読み込みを進めた。英語著書の執筆も進めた。 本年度は、二回の依頼講演を行い、学会誌論文一編を出版し、論集所収予定の論文一編を提出したことから、一定の研究成果をあげることができたと考える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は、Huggins, Hutchingson, Lewis, Sollorsらハーレム・ルネサンスの代表的著作の読み込み及び再読を行ない、それを基に、アメリカ文学会中部支部大会シンポジウムを企画した。また、ネラ・ラーセンの複数の伝記を比較対照しつつ読み、分析し、その成果を2019年出版予定の論集に論文として寄稿した。また、学会誌『フォークナー』21号にも論文を寄稿した。また、2019年度内に出版予定のハーレム・ルネサンス論集への原稿もほぼ完成させた。 本年度は二つの講演を行なった。2018年9月あいち国文の会における講演と、11月津田塾大学アメリカ文学研究会における講演であり、研究の一端を発表することができた。しかし、病気のため、海外での学会への出席・研究発表、現地調査を行うことができなかったので、「やや遅れている」と自己評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度は以下のように研究を進める予定である。 1. 論文・著書の執筆 研究の最後の年度となり、これまでで研究してきたことを、論文および著書として執筆・出版する段階に入った。次年度中に二編の研究論文を完成させる予定である。すでに一論文は完成に近い状態である。もう一つの論文では、ネラ・ラーセンの小説『流砂』の再読を行い、ラーセン文学の現代的意義を考察する予定である。 加えて、アフリカ系アメリカ文学に関する英文の単著書を、アメリカ合衆国で出版する目標のため、鋭意執筆を進める。これは本研究期間ずっと行なってきたことである。執筆完了の予定がついた段階で研究成果促進費に申請したい。 2. シンポジウム、講演、研究発表 19年4月に開催される日本アメリカ文学会中部支部第36回大会において、「ハーレム・ルネサンスとは何か」と題するシンポジウムを自ら企画し、司会講師を務める予定である。また、10月には日本英文学会中四国支部大会において「ハーレム・ルネサンスとネラ・ラーセン」と題する特別講演(依頼)を行う予定である。また、海外学会での研究発表、及び、ニューヨーク、タスキーギー、フィスク大学での現地調査を予定している。
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Causes of Carryover |
(状況) 2018年度数ヶ月間深刻なめまいの症状のため起立困難となったため、予定していたアメリカ合衆国での学会発表および学会出席をキャンセルせざるをえなくなった。また、予定していたニューヨーク、アラバマ州、テネシー州での実地調査を行うことができなかった。これらの計画については次年度行いたい。また、前記以外の研究については達成した。 (使用計画) 英文によるアフリカ系アメリカ文学研究書をアメリカ合衆国で出版するために、本研究年度を通じて準備を行なってきた。そのための英文プルーフリード費用に未使用分の一部を充てたい。また、今年度海外学会参加費用、および、ニューヨーク、アラバマ州、テネシー州での実地調査ための旅費・宿泊費に充てたい。
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Research Products
(4 results)