2019 Fiscal Year Annual Research Report
Postwar-ness of American Southern Literature with a Comparative Perspective from Postwar Japanese Literature
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16K02510
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
後藤 和彦 東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 教授 (10205594)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | アメリカ南部文学 / 戦後文学 / 戦後性 / 敗北の文化 |
Outline of Annual Research Achievements |
最終年度にあたる2019年度については、これまでの作業を踏まえ、引き続き、アメリカ南部文学を「戦後文学」と規程する場合の「戦後性」について、我が国のいわゆる「戦後文学論争」にお ける「戦後性」にまつわる議論を検証・定式化し、その結果を南部文学作品読解に援用することの可能性を探求する作業を行った。 具体的にはアメリカ南部文学については、当初の計画どおり、20世紀中葉以降、特にヴェトナム戦争期に活躍した作家として、Walker PercyおよびBarry Hannahを取り上げ、代表的作品を分析して、南部という地域を、19世紀中葉の南北戦争における敗退以後、特徴づけてきた「敗北の文化」が、地方習俗全般の希薄化にともなってどのように推移(あるいは衰微)していったか、ヴェトナム戦争の、必ずしも敗北とはいえないまでも苦々しい結末によっていかに複雑化していったかを跡づけた。 また日本近代文学については、やはり当初の計画にしたがい、安保条約締結・改定以後、あるいはいわゆる高度成長期後の比較的新しい文学的成果を対象に据え、戦後文学研究における「戦後性」の希薄化あるいはその変容について吟味をおこなった。 以上を踏まえ、2020年度の日本英文学会全国大会(琉球大学開催)のシンポジウムとして「小説家と歴史」を企画立案し、国内の英文学者、現代アメリカ文学者、日本の戦後文学研究者とともに、歴史の屈曲がいかに文学に刻印されているかをおののの観点から検証することを目指した。 私は言うまでもなくアメリカ南部文学と近代日本文学を対象とし、そこに描かれた女性の一生の屈曲――特に婚外性体験を経た後の人生の不可逆の屈曲――に、ヨーロッパやアメリカの他地域の同様の事例との比較を行いつつ、その特徴について論ずる準備を整えた。全国大会は新型肺炎流行により休止となったが、企画自体は来年度の大会に持ち越される予定。
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