2017 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
16K02511
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Research Institution | Toyo University |
Principal Investigator |
余田 真也 東洋大学, 文学部, 教授 (20277750)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | デヴィッド・トロイヤー / オジブウェ / 口承伝統の再利用 / 翻訳と創作 / 文化的混血 / ポーラ・ガン・アレン / ポカホンタス / アルゴンキン文化圏 |
Outline of Annual Research Achievements |
2016年度におこなったGerald Vizenorの作品研究に続き、2017年度は同じく先住民オジブウェに帰属する気鋭の現代作家David Treuerの文筆活動に焦点をあてて研究を進めた。トロイヤーに縁の深いリーチレイク・バンドの保留地への訪問など、ミネソタ州での現地調査も交えながら、彼の文学実践における部族性と普遍性の関係を検証し、その文学史的な意義を抽出しようとした。その成果の一部として、トロイヤーが先住民文学に対する審美的な評価の必要性を説いた挑発的な評論集Native American Fiction: A User’s Manual (2006)と、その審美意識を小説化したThe Translation of Dr. Apelles (2006)を対象にした論文にまとめ、口承伝統と翻訳者の関係を複層的に脱構築し、物語の再利用と作家のアイデンティティという主題に分け入るトロイヤーの文学的達成を明らかにした。 当初、本研究は三人のオジブウェ作家(ヴィゼナー、トロイヤー、アードリック)の作品研究を先に進め、最終年度(2019年度)に彼ら以外の先住民作家との比較考証を通じて総括につなげる計画であったが、今年度は最終年度の計画を先がける研究もおこなった。というのも、2017年は新世界アメリカにおける最初期の文化的混血であるPocahontasの没後400周年にあたり、それに関連してアメリカ文学会東京支部にて企画された学会シンポジウムに登壇する機会を得たからである。パネリストのひとりとして、ラグーナプエブロに帰属する先住民作家Paula Gunn Allenが2004年に上梓した伝記Pocahontasに焦点を当てて、作家性と部族性、文学性と民族性、地域性と超域性の関係考証に連動しうる内容の発表をおこない、さらに同学会誌への慫慂に応じて論文を寄稿した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究実績の概要に記したように、2019年度に予定していた研究に着手したため、2017年度に予定していた課題の一部(デヴィッド・トロイヤーの文学における部族性の考察)を十分に進められなかったため、2018年以降も引き続き取り組む必要がある。また所属の変更にともない、研究環境が大幅に変わり、適応にかなりの時間を要した。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画に則り、2018年度はルイーズ・アードリックの文筆活動と部族社会の関係性の探求に焦点を当て、彼女の実人生や文学世界とかかわりの深いノースダコタ州やミネソタ州での現地調査も交えながら、彼女の文学実践の部族的な意義と普遍的な意義の相関を導きだせるよう努めたい。作家としてのキャリアが長く、参照すべき作品や研究が多いだけでなく、メジャーな文学賞における受賞歴が物語るように、アードリックは非先住民読者における認知度も高い。したがって本研究ではこれまでに十分に研究・検証が進んでいない作品にも注目して、アードリック研究に新機軸を見いだすべく努めたい。また2017年度に十分に進められなかった課題(デヴィッド・トロイヤーの文学における部族性の考察)についても引き続き取り組みたい。
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Research Products
(3 results)