2017 Fiscal Year Research-status Report
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16K02515
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Research Institution | Tokai Gakuen University |
Principal Investigator |
倉橋 洋子 東海学園大学, 経営学部, 教授 (10082372)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
城戸 光世 広島大学, 総合科学研究科, 准教授 (10351991)
竹野 富美子 名古屋学院大学, 商学部, 講師 (20751746)
竹腰 佳誉子 富山大学, 人間発達科学部, 准教授 (70377232)
古屋 耕平 神奈川大学, 外国語学部, 准教授 (70614882)
林 姿穂 三重県立看護大学, 看護学部, 准教授 (80649830)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 知のコミュニティ / カンバセ―ション / 翻訳 / フィラデルフィア図書館会社 / エマソン / ヤング・アメリカの運動 / Sarah Orne Jewett / ボストン自然史博物館 |
Outline of Annual Research Achievements |
ヨーロッパからの学術的独立と民主的な国家建設をめざす18・19世紀のアメリカにおける、文学、哲学、科学、博物学、出版等に関する各分野の知識人によるアメリカ哲学協会、サタデー・クラブ、ヤング・アメリカ、および博物学、翻訳、ユートピア運動等を中心とした知のコミュニティに関する研究を、資料を国内外にて収集しつつ行った。具体的な研究内容は以下の通りである。 倉橋は、ピーボディ、オルコット、フラーらが教育で実践し、エマソンが理論化したカンバセ―ションが、メアリー・マンの作品においても活用され、形成された知のコミュニティは奴隷制反対に向かったことについて考察した。城戸は、19世紀後半の女性作家、Sarah Orne Jewettの作品における女性や自然との共生関係やコミュニティの構築が、作品の語り手である旅行者、一時滞在者としてのスタンスとどのようにかかわりあっているかについて考察した。竹野は、ソローとボストン博物学協会における科学者コミュニティとの交流と影響について、エマソンとのかかわりも視野に入れて検討した。竹腰は、フランクリンが設立した「フィラデルフィア図書館会社」と独立革命期のアメリカで活躍した知識人との関係性や図書館会社の社会への影響等について研究した。古屋は、十九世紀アメリカ文学における翻訳の意義について、特に、特にメルヴィルのゲーテとのカンバセ―ションやフラーのエッカーマン作『ゲーテとの対話』の翻訳について考察した。林は、ヤング・アメリカの運動に積極的な批評家のメルヴィルの作品に対する批評について、研究を進めた。さらに、それぞれ共著書のための論文の制作を行った。 研究成果はそれぞれ、国際学会アメリカ・ソロー協会やメルヴィル学会、日本ナサニエル・ホーソーン協会等にて口頭発表し、研究論文は共著や学会誌等に投稿し、掲載された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究代表者と研究分担者は、多角的な方面から知のコミュニティの形成過程や活動内容、知のコミュニティに関する文学者や思想家等の役割や関係を分担して研究することを予定していた。その結果、エマソン大学メーガン・マーシャル教授の来日中に、国際研究集会、International Workshop "Transcendent Women in the Long 19th Century"を開催し、ワークショップを行い、国際学会や国内の学会にて口頭発表し、成果を論文として公表した。さらに、平成30年度に研究成果を書物にして公表するための編集委員会を開催するなど、研究はおおむね順調に進めることができた。なお、研究分担者の1人が産休・育休のために研究が一時中断したが、それ以後に研究を進めることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度の平成30年度は、さらに研究を深め、口頭で研究発表をするとともに、研究成果を書物にまとめ出版する予定である。内容は、18・19世紀 のアメリカのヨーロッパからの知的独立のみならず、民主国家建設、奴隷制廃止等にも関心を示した知のコミュニティの存在を発掘し、その形成過程と動向を明らかにする。それと同時に、作家や知識人が知のコミュニティの活動にいかに関わったかも考察し、彼らのアメリ カ社会への貢献を明らかにする。具体的には以下の1から6である。 1.フ ランクリンを中心としたアメリカ哲学協会が「アメリカ退化説」に論駁してアメリカのイメージを 確立したこと、2. ソローの「マサチューセッツの博物誌」が、書評対象であるボストン博物学協会主導の『マサチューセッツの報告書』の自然観に深く影響を受けていること、3.『懐か しの故国』のピアスへの献辞をめぐるホーソーンとサタデー・クラブの見解の相違は、政治 (奴隷制)と文学や集団と個人の問題を提起していること、4.エッカーマンの『ゲーテとの対話』のフラーによる翻訳作業が知のコミュニティを形成していること、5.超絶主義的ユートピア・コミュニティのブルック・ ファームに参加した女性からみたユートピア運動の理想と現実、6.メルヴィルの作品に読み取るヤング・アメリカ運動と著作権等の文学界の問題点の探求である。 なお、本研究で扱われる知のコミュニティは、F・テ ンニースの「ゲマインシャフト」と「ゲゼルシャフト」、それらから発展した R・マッキー ヴァーの実際に存在する「コミュニティ」、さらに B・アンダーソンのメディアを通して形成された想像上の政治共同体に至るコミュニティの概念に網羅される。
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Causes of Carryover |
研究代表者と分担者は海外の国際学会にて発表を行ったが、他の研究費にてその費用を支払ることができたために、旅費の使用が予定よりも少なくなった。 本年度は書物の購入や研究成果をまとめるための分担金として使用し、また、国内外の学会に出席するために使用する。
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Research Products
(17 results)