2017 Fiscal Year Research-status Report
初期アメリカにおける奴隷叛乱事件――文学的・文化的想像力の創生と影響
Project/Area Number |
16K02517
|
Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
白川 恵子 同志社大学, 文学部, 教授 (10388035)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | 初期アメリカ / 奴隷叛乱陰謀事件 / アメリカ文学 / 北米英領植民地 / ストノ、サウスカロライナ / 魔女狩り / ヴァージニア / アンテベラム |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、初期アメリカの奴隷反乱事件についての文学的・文化的考察である。アンテベラム期の南部奴隷制度研究およびその文学的成果についての論考、著述は、数多存在するが、本研究は、昨今のアメリカにおける研究動向に連動し、植民地時代の北部ニューイングランド、ニューヨークなどが、いかに奴隷制に深くかかわってきたかを考察し、そのうえで、個別奴隷叛乱事件や、その文学的表象についてとんずることを目的とする。その過程で、従来の研究では全く注目されてこなかった新たなテクストを見出し、分析する。 2017年度は、①1741年のニューヨークの奴隷反乱事件について情報ネットワークの側面から、学会口頭発表および論文執筆を行い(2018年度に出版予定)、②17-18世紀北米英領植民地における奴隷叛乱の事例につき、マニフェスト・デスティニーとの関連で講演を行い、③ネイト・パーカー監督作品The Birth of a Nation(2016)の内容とその顛末について口頭発表を行い、④「幸福の追求」に関してトマス・ジェファソン縁戚のスキャンダルについての論文を執筆した。 ニューヨークの奴隷反乱陰謀事件の概要提示は、一定の成果を見たので、今後は、①本件を扱った文学作品についての考察まとめ、②ストノの奴隷叛乱についての執筆を行い、③当初の計画にはなかったバルバドス島における陰謀事件についても「魔女狩り」現象との関連から考察したい。さらには、④ガブリエル・プロッサーとデンマーク・ヴィージーの叛乱(両者とも南部)までたどり着くことを目標としている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2016年度は、2本の論文を出版し、チャールストンとニューヨークにて、リサーチを行い、その一部を夏季セミナーにて口頭発表した。 2017年度は、2本の論文を執筆(うち、一本は出版され、もう一本は、現在、書店にて作業中)、口頭発表2本、招待講演を1本行った。 2年間の研究成果としては、比較的順調であると考える。 ただし、当初はあまり予定に組み込んでいなかった北米英領植民地を広域かつ広範な時代から捕えることも視野に入れ、とくに、いわゆる「魔女狩り」現象と奴隷反乱陰謀の噂との関連についても考えたいので、扱う対象が増えているきらいがある。研究の進捗によってテーマ自体が膨らむのは、よくあることではあるが、今後とも、分析対象の精査をしていく必要があるだろう。
|
Strategy for Future Research Activity |
上記の「研究実績の概要」でも述べた通り、2018年度以降は、次の作業を行いたい。 ①ニューヨークの奴隷反乱陰謀事件を扱った文学作品(少なくとも6作品はある)のうち、4作品は読了しているので、残りの2作品を読み、文学的視野からの分析と報告を行う。②ストノの奴隷叛乱についての歴史的概要と①との関連を考察し、口頭発表および論文の執筆を行う。③バルバドス島における陰謀事件についても「魔女狩り」現象との関連から考察する。(この点については、本研究申請時に構想していなかったが、研究の過程で、興味の対象となった。)西インド諸島の奴隷反乱陰謀説がニューイングランドの「魔女狩り」騒動と、何らかの関連を持ちうるのかどうか、リサーチする。できうれば、④ガブリエル・プロッサーとデンマーク・ヴィージーの叛乱(両者とも南部)までたどり着きたい。また、このところ、ナット・ターナーの叛乱(ウィリアム・スタイロン作品の再評価が、2016年のMississippi Quarterlyでも特集された)についての研究動向アップデートは、都度都度行う。
|
Causes of Carryover |
海外へのリサーチないしは国際学会発表予定が一年間ずれ込んだため。
|
Research Products
(5 results)