2018 Fiscal Year Research-status Report
初期アメリカにおける奴隷叛乱事件――文学的・文化的想像力の創生と影響
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16K02517
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
白川 恵子 同志社大学, 文学部, 教授 (10388035)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 初期アメリカ / 奴隷叛乱事件 / アメリカ文学 / 北米英領植民地 / ニューヨーク / ストノ・サウスカロライナ / 魔女狩り / アンテベラム |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、初期アメリカの奴隷反乱事件についての文学的・文化的考察である。奴隷制や奴隷叛乱といえば、従来、南北戦争以前期の南部社会における考察が、中心であったが、本研究では、植民地時代にも勃発した奴隷叛乱事件や、北部における奴隷存在の実態が、いかに植民地内はもとより、ヨーロッパ列強とも深い関連を示していたかを探る。例えば、それは、ニューヨーク植民地における奴隷叛乱陰謀事件(1721、1741)や、ニューイングランドと奴隷貿易とのかかわりであり、またカロライナ植民地における叛乱(1739)などが、具体的な考察対象となる。 2018年度は、本件研究の3年目にあたり、①ニューヨークの叛乱陰謀事件についての論考を共著として出版し、②同叛乱陰謀疑惑を小説化した作品群中より、マックファーランドの著作について口頭発表および論文執筆し(論文は、2019年度に共著として出版予定)、③ストノの叛乱と19世紀半ばの拡大膨張論との関連を、共著として、執筆した(2019年度内に出版の予定)。現在も上記の2つの叛乱事件について、文学的・文化的表象の分析・考察に取り組んでいる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2016年度は、2本の論文を出版し、チャールストンとニューヨークでリサーチを行い、その一部を、夏季セミナーで口頭発表した。 2017年度は、2本の論文を執筆し(うち1本は、年度内に出版され、もう1本は、2018年度内に出版刊行)、口頭発表2件、招待講演を1件行った。 2018年度は、共著論文を1本出版し、共著論文を2本執筆し(うち2本とも2019年度内に出版刊行予定)、2件の口頭発表(1件は、国内、1件は海外学会)を行い、かつ奴隷制についての書籍の書評を執筆した。(ただし、2018年度に執筆した2本の共著論文については、現在、編集印刷作業中につき、下記の本年度成果には、含めていない。)また海外学会発表出張に際しては、奴隷叛乱という直接的抵抗が、のちの時代にいかに展開していったかの関連として、公民権運動の拠点の一つアラバマ州モンゴメリーにて、各種ミュージアムを訪れ、今後の研究動向の一助となる情報を得た。現在も執筆中の論考がある。 上記に鑑みれば、毎年確実に、一定以上の成果を上げており、よって、進展についてはかなり順調であると考える。ただし、「おおむね順調」を選んでいるのは、研究が進むにつれて、横方向への関連領域考察が拡大深化する傾向にあり、当初計画になかった事案についても、論考の余地があることがわかってきて、なかなか当初予定到達課題目標に辿りつけないからである。 プロジェクトのゴールは、表層的総体としてのまとめではなく、研究がより深化した形での発展拡大のほうが望ましく、また研究とは本来、そのようなものであると思われるので、今後とも精査は必要であるものの、本年度以降の2年間で、より完成され、充実した成果を目指したい。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題は、2019年度、2020年度と、残り2年間である。よって、特に本年度(2019年度)は、以下を重点的に行いたい。 ①ニューヨークの叛乱陰謀事件を小説化した作品は、少なくとも7作は存在するので、マックファーランド以外の他作品についても、各一章(ないしは、一論文)となるように、分析する。 ②ニューヨークのOld Burial Groundについて、考察し、論考をまとめる。 ③ストノとの関連づけおよびストノ叛乱を小説化した短編についても言及する。 ④これらを総体的に単著として出版できるように原稿をまとめる。 ただし、④については、主に2020年度の作業となるだろう。
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Causes of Carryover |
海外学会発表のための出張がシーズンオフの2月で、かつ格安の航空券が手配でき、宿泊場所をやや離れた場所にしたため、当初想定していたよりもかなり安価な旅費で済んだ。よって、次年度以降の研究活動費に充当する。
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Research Products
(4 results)