2016 Fiscal Year Research-status Report
『緋文字』におけるJohn Henry Newmanのかげ
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16K02518
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
入子 文子 関西大学, 東西学術研究所, 非常勤研究員 (80151695)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 緋文字 / ディムズデイル / オクスフォード / ロード大司教 / ジョン・ヘンリー・ニューマン |
Outline of Annual Research Achievements |
17世紀前半のピューリタンによるマサチューセッツ湾植民地第一世代を舞台にした The Scarlet Letter(1850)でナサニエル・ホーソーン(1804-64)はなぜ、ピューリタンの若い牧師ディムズデイルを、オクスフォード大学出身にしたのか。ピューリタンといえばケンブリッジというのが文学史の常識ではなかったか。本研究では申請者のこの長年の懸案事項を前面にすえ、作品中央部第12章と終盤とに交錯する数々の不思議な光の解明を通して<オクスフォードのディムズデイル>に迫ることを目的とする。その際、ホーソーンと同時代のイギリスでオクスフォード運動を牽引し、1845年にカトリックに改宗したジョン・ヘンリー・ニューマン(1801-90)と、その200年前のある特定な時期のイギリス国教会で、カトリック寄りの特殊な神学を進めたカンタベリー大司教ウィリアム・ロードを介して、トランス・アトランティックに読む合理性を示そうとする。 本研究は2015年日本英文学会全国大会招待発表「Dimmesdaleを読み直す」における、『緋文字』第12章の謎の光の分析により、第一歩を踏み出している。だが更なる深化に不可欠なのは、ロードの好んだカトリックの典礼、儀式の具体的把握である。そのため関連書籍を読み進めた.これらの体験は、2016年12月、関西ホーソーン協会での研究発表「ディムズデイルの隠されたモデル」や2017年1月慶応大学での特別講演会「ホーソーン『緋文字』研究の新展開」、及び論文「ディムズデイルの人物造形にインスピレーションを与えたもの」として実った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
テロの危険や怪我などで、計画していた海外での資料収集は実現しなかった。しかし、研究課題にはこのところ、ホーソーンとカトリシズムを継続的に取り上げていたため、文献は豊富に入手できている。また、国内の大学、カトリック大学の図書館、ネット上のニューマン・リーダーなどをも利用して国内での文献研究を続けた。 何よりも有益だったのは、本研究の申請時にすでに2015年の英文学会発表において研究の基礎を固めていたので、問題点が見えていたことだ。後は時間をかけて細かくつめていくことだった。2015年九州ホーソーン協会招待講演「ホーソーンの星と手袋」、2016年関西ホーソーン協会発表「ディムズデイルの隠されたモデル」、2017年慶応義塾大学特別講演「ホーソーン『緋文字』研究の新展開ーバーコヴィッチを超えて」、論文「ディムズデイルの人物造形にインスピレーションを与えたもの」と続いた。また、社会への還元を意図した『ホーソーン研究』も4年間継続させた。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の目的、「『緋文字』におけるJohn Henry Newmanのかげ」は、申請者の長年の懸案事項であったディムズデイルの読み直しのための重要な鍵である。物語の舞台1840年ごろをはさんだ英国国教会のカトリックとピューリタンの特殊な状況に強い関心を抱いていたニューマンが、ディムズデイルに影を落としていることを、今後もニューマン自身の手になる文献と『緋文字』及びその他のホーソーンのテクスト、そして17、19世紀をめぐる歴史資料との、間テクスト的分析により明らかにする予定である。 研究成果はホーソーン協会他の学会、及び『ホーソーン研究』で逐次発表する。
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Causes of Carryover |
ISに起因する不穏な世界情勢と、予期せぬ怪我のため、予定していた外国出張を取りやめた。次年度の外国出張に有効活用する。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
昨年度に計画していたオクスフォードでの本格的な資料収集を行う。
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Research Products
(4 results)