2017 Fiscal Year Research-status Report
アメリカ文学における科学技術とヒューマン・アイデンティティの変容
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16K02520
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Research Institution | Fukuoka University |
Principal Investigator |
新田 よしみ 福岡大学, 国際センター, 講師 (80465723)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
肥川 絹代 近畿大学, 産業理工学部, 教授 (20740674)
下條 恵子 九州大学, 言語文化研究院, 准教授 (30510713)
C.SCOTT PUGH 西南学院大学, 文学部, 教授 (60244795)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | テクノロジー / アンドロイド / 人間性 / 写真 / 音楽 / 不死 / 芸術 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度を研究の深化の年と位置付け、個々の研究者たちが決めたテーマに沿って、文献の収集、口頭研究発表の実施、論文の執筆などを行った。また、アメリカ文学に関連する学会へ積極的に出席し、知見を深めた。 さらに、月に一度勉強会を開催し、Carroll Pursell,Companion to American Technologyと、Mark Seltzer, Bodies and Machinesを精読して、特に19世紀末のアメリカ社会及びアメリカ文学に内在するテクノロジーの影響について議論を交わした。以下、平成29年度中の各個人の研究実績を記す。新田はSteven Millhauser短編作品にみられる幻影やレプリカの描写を分析した。19世紀末のテクノロジーの進化やそれに伴うマジックショーの在り方や映画などの視覚芸術の変容に伴い、ミルハウザー作品に登場する鑑賞者が抱く「人間性の在り方」へ疑義を投げかけようとしているのではないかと仮定し、口頭発表と論文にした。ピューは、Kurt Vonnegut Jr., Player Pianoを中心に、テクノロジーがいかに人間性を失わせていくかを「音楽」というキーワードのもと研究を進めた。肥川は、20世紀アメリカにおいて、科学技術の日常生活に与えた害、及び、その害が人々の恐怖をいかに煽ったかを調査・考察した。それとともに、それらが、Don DeLilloの作品White Noiseで、いかに表象されているか、科学技術の発展に対する人々の恐怖をとりあげ、人々に一種の救済を与えているのか考察し、論文とした。下條は、家事、家政学および保険や神学などの文献を調査し、19世紀アメリカにおいて科学的考察の対象となって発展した家事言説と数理的知見の導入により新たな展開を見せた保険言説の関わりを考察し、口頭発表を行なった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
月に一度の勉強会では、それぞれの研究で活かすことができるよう、19世紀末のテクノロジーについて様々な観点から分析を行っている文献を精読し、議論を重ねている。この勉強会で得た知識やアイデアをもとにして、個人の研究をさらに進めることができている。 また、研究代表者と研究分担者全員が所属している学会の定例会に於いて、平成30年度に口頭発表をさせていただく機会を得たことで、個人個人で研究テーマを決め、それらに関する文献収集などにもすでに取り掛かっている。 さらに、各自が様々な機会を利用して口頭発表を実施し、論文を学会誌や大学論叢誌に発表していることも、これまでの研究進捗状況が順調であることを示唆しているのではないかと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
各個人そ研究テーマに従い、平成30年度12月に予定している九州アメリカ文学会例会での口頭発表の準備を中心に進めていく。 月一度の勉強会で進捗状況を報告し合うだけではなく、個人の研究内容に対して互いにコメントしあうことで、内容に客観性を持たせて深化させることを目指す。 研究に必要な論文や文献などを科研費を利用して個人で収集を進める。
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Causes of Carryover |
平成29年度は、国際学会へ参加する予定であったが、研究者の学務などの状況により、当初の予定を変更せざるを得なくなった。また、実施予定であった海外での調査研究を次年度以降に延期することとなった。さらに、研究最終年度に論文集を出版する計画となったため、出版費用に予算を充てることにしたため、平成29年度は、予算の使用額が大幅に少なくなった。
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Research Products
(4 results)