2017 Fiscal Year Research-status Report
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16K02524
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
竹内 修一 北海道大学, 文学研究科, 准教授 (40345244)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | マルロー / 集合的記憶 / コメモラシオン / パンテオン |
Outline of Annual Research Achievements |
小説『希望』や『人間の条件』で名高い作家アンドレ・マルローは、第二次世界大戦後ドゴール将軍と行動をともにし、1958年に将軍が第五共和国大統領に就任すると、初代文化大臣をつとめてフランスの文化行政を指導した。本研究は、彼が企画・実施したセレモニーや演説、発言等 を調査して、現在のフランス国民の集合的記憶の形成に、マルローがどのような役割を果たしたのかを見極めようとするものである。 今年度は、前年度同様、マルローと集合的記憶をめぐる必要文献を収集するとともに、マルローの演説や講演などの調査・分析をおこなった。そうした研究成果の一部を、日本フランス語フランス文学会秋季大会において開催したワークショップ「パンテオンと作家たち」で発表した。この発表は、マルローの文化政策の継続を明言する、ドゴール派の大統領シラクが挙行したアンドレ・マルローそのひととアレクサンドル・デュマのパンテオン入りの歴史的意義について考察したものである。また、1964年12月19日にマルローがパンテオン広場で行ったジャン・ムーラン(1899-1943)の追悼演説について、論文を作成した。この論文は、マルローの演説が、第五共和制の初期にはほとんど忘れられていたムーランを「フランスために死んだ」「偉人」にし、彼とドイツ占領時代の記憶を呼び起こすことによって、アルジェリア戦争という近い過去の記憶を抑圧することを明らかにするものであるが、雑誌への発表は次年度になる予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
日本フランス語フランス文学会秋季大会において開催したワークショップで、本研究の成果について発表することができた。また、20世紀の追悼演説の傑作と言われるマルローの演説(「ジャン・ムーランの遺灰のパンテオンへの移葬」)を分析し、論文作成をすすめることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度に引き続き、アンドレ・マルローの行った文化政策およびメモリースタディーズに関する資料を収集する。また、フランス国立図書館等でマルローの原稿や関連書籍の調査を行いたい。
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Causes of Carryover |
フランスに出張してマルロー関係の文献を調査する予定であったが、都合がつかず、フランス出張を翌年度にまわしたため。したがって、次年度使用額は調査のための出張旅費に充当する予定である。
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Research Products
(2 results)