2016 Fiscal Year Research-status Report
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16K02530
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
渋谷 豊 信州大学, 学術研究院人文科学系, 准教授 (70386580)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 日仏比較文学 |
Outline of Annual Research Achievements |
「両大戦間期フランスにおけるジャポニザンの活動」の実態と意味の解明を目指した研究の一環として、当時フランスで刊行されていた仏語雑誌『フランス・ジャポン』に主に依りながら日本文学・日本文化の紹介に尽力したフランス人の活動について考究した。その際、二つの着眼点を持って作業を進めた。 まず、日本で兵隊作家として脚光を浴びていた火野葦平の作品(『土と兵隊』「煙草と兵隊」)の紹介・翻訳に着目した。即ち、火野葦平作品の翻訳の内実の検討、底本となった版(英語版を含む)の特定、フランスのメディア(「フィガロ」紙など)の動静およびフランス人読者の反応を調査した。これにより、第二次世界大戦勃発の前後に、日本の戦争を扱った作品がフランスでどのように受けとめられたか、その実態の一面が明らかになった。なお、ここでは特にアルフレッド・スムラーの仕事に注目することとなった。 上記の作業と並行して、フランスにおける芥川龍之介の作品の紹介・翻訳にも着目した。ここではジルベルト・ラ・ドルジュなどの仕事に光を当てることになった。 以上の調査・考察を通して、まだフランスで日本文学のアカデミックな研究・教育が軌道に乗っていなかった時期に、『フランス・ジャポン』のような日本文化紹介の雑誌が、フランスのジャポニザンを育む「学校」のような役割を果たしていたことが、その実態とともに明らかになり、フランスにおける日本文学の受容の歴史の一面が解明された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
フランスに紹介された日本文学作品の目録を作成するにとどまらず、日本文学の紹介がフランス側のどのような文学的・思想的動向と交差したのか、またフランスでどのような反響を生んだのかを明らかにすることを重視しているが、その実現に向けて徐々にではあるが確実に進んでいるため。
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Strategy for Future Research Activity |
第一次大戦直後にフランスで提唱された「モダンな古典主義」と、フランスにおける日本文学受容の関わりについて考究する。具体的には雑誌 le Mouton blancをめぐる調査・考察が鍵となる。この調査・考察によって、当時の代表的なジャポニザン(ルネ・モーブランなど)の仕事の背景と意義が明らかになるはずである。そのために、フランス国立図書館に所蔵されている当雑誌のバックナンバー等の検討に比重を置く。
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