2016 Fiscal Year Research-status Report
ゴシック・リヴァイヴァルと19-20世紀フランス文学・美術における植物表象の変遷
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16K02532
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
加藤 靖恵 名古屋大学, 文学研究科, 准教授 (90313725)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 19-20世紀フランス文学 / プルースト / エミール・マール / ラスキン / ゴシック建築 |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度までに集めた文献・写真資料のうち,アミアン大聖堂,リジュー大聖堂,タン教会にしぼって整理をした上で,考察をし,パリ第3大学のプルースト研究所で講演,さらに日仏の専門誌に論文を発表した。その過程で,ゴシック様式の特色を分析する上で,前後の時代の植物表象の変遷を詳しく辿る必要が生じ,対象を11世紀~15世紀に広げて,夏のフランスでの調査ではイル・ド・フランスの教会の彫刻とステンドグラスの写真撮影と資料収集を行った。現地調査は今回はシャトーダンとその周辺の教会,レザンドリー,シャルトル,パリで行った。 関連する文学テクストについては,引き続きプルーストとラスキンに重点を置いた。前者については競売等で発掘されたり,アメリカの図書館が所蔵している草稿資料も対象とした。その成果の一部を国際学会で発表し,日仏の専門家のレビューを受けた。またエミール・マールによる12・13世紀宗教美術に関する草稿メモのうち,植物と動物のモチーフに関するものの転写の見直しと整理を行った。その際にマールが言及している彫刻,壁画,ステンドグラス,写本等の画像の資料の収集も行った。フランス国立図書館,フランス学士院図書館で文献を閲覧し,またフランス国立科学研究所近代草稿研究所のプルースト班より,メール等の手段も通して資料収集の協力を得た。 プルーストとラスキンの著作における花の表象に関するこれまでの論考を見直し,本年度の成果もあわせてフランスのシャンピオン社で刊行するための準備を始めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初,13世紀に焦点をあてる予定が,対象となる時代が広がったにも関わらず,資料収集と考察を順調に進め,研究発表や論文の刊行を行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度の調査の成果をふまえ,文献調査と資料収集を続ける一方で,以下の点に重点をおいて分析を行い,植物を巡る13世紀と19世紀のヨーロッパにおける芸術創造をめぐる状況の類似点を具体的に明示し,理論構築を完成させる。 1. 18世紀後半から19世紀前半に,フランスやヨーロッパで出版された植物学の専門書の概要をつかむ。その際は,図版の変遷にも注目する。それとともに,こうした研究成果が文学や美術作品に与えた影響についても考察する。それにあたって特に19世紀末の美術・工芸品の画像資料の整理をする。 2. ゴシック建築の画像資料の収集を続けるとともに,分析にとりかかる。彫刻のモチーフとして様式された意匠が現実のどの植物に相当するのか限定することは困難であるが,中世美術研究者や植物学研究者の協力を求めることも検討する。
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Causes of Carryover |
当初春に行う予定だったフランスでの調査を,前年度3月末~4月初めに前倒ししたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
4月から5月に2週間フランスで調査と資料収集をする。また当初予定のなかった招聘事業を行う。現代詩における植物と植物学についての論文を発表している元大阪大学文学研究科外国人教師のアニエス・ディソン氏に講演依頼をし,研究打ち合わせをする。
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