2018 Fiscal Year Research-status Report
ゴシック・リヴァイヴァルと19-20世紀フランス文学・美術における植物表象の変遷
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16K02532
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
加藤 靖恵 名古屋大学, 人文学研究科, 准教授 (90313725)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | エミール・マール / ジョン・ラスキン / プルースト / ゴシック美術 |
Outline of Annual Research Achievements |
エミール・マールの草稿の筆写と分析を継続する一方で,マールが言及している12-13世紀の祈祷書の細密画も新たに調査の対象とし,パリのアルセナル図書館で原本の閲覧を許可され,資料の収集をした。同様にサント・ジュヌヴィエーヴ図書館所蔵の写本についての調査も開始した。 また,フランスのヴェズレー教会内部の柱頭の動植物の彫刻についての文献調査と現地での写真撮影を行tた。 特に本年度考察の対象としたのは,ゴシック建築における植物のモチーフと人物像の取り合わせの問題である。改めてジョン・ラスキンの言説の検証も行った。19-20世紀フランスにおける中世キリスト教美術の自然観の影響を述べる上で,ラスキンの果たした役割の重要性を再認識し,フランスで近年ラスキン研究の中心となっている研究者数名および国内のフランス文学・西洋美術史研究者と情報交換を始め,日本フランス語フランス文学会秋季全国大会にてそのうちの3名とともにフランスにおけるラスキン受容についてのワークショップに参加した。イギリスのアシュモレアン博物館所蔵のラスキンのデッサンの調査を開始した。 特に聖母マリアの身体性の表象について,エミール・マールのメモと最終稿の比較を行い,マール草稿研究の具体的な成果発表と足がかりとした。 19世紀~20世紀のフランス文学におけるゴシック・リヴァイヴァルの影響の考察の成果の一部を,マルセル・プルーストの著作における植物のモチーフに焦点を当てて,単著で刊行する準備を終了した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ラスキンに改めて焦点を当てるという方向転換はあったが,研究計画に広がりがもたらされることが期待され,現地調査もフランスでのストやデモの影響を受けつつも,順調に進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
19世紀-20世紀フランスの文学,美学,美術批評と美術におけるラスキンの影響について,11月には名古屋大学にて国際学会を開催し,最新成果を集結し,今後の研究方針を定める。それに先んじて,6月にはイギリスのアシュモレアン博物館にてラスキンのキリスト教美術のデッサンにおける人物像と植物のモチーフについて調査をする。 特に東洋美術が13世紀,および19世紀にヨーロッパ美術とその植物表象に与えた影響を重点的検証し,近代西洋美術や中世東洋美術の専門家と情報交換も進める。 その上で,4年間の集大成をし,今後はゴシック美術における自然表象全般と近代文学・美術への影響に関する国際的共同研究へと発展させる具体的な準備をする。
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Research Products
(6 results)