2019 Fiscal Year Research-status Report
クローデルの日本論に見られる東洋思想の影響と新トマス主義との関連についての研究
Project/Area Number |
16K02543
|
Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
大出 敦 慶應義塾大学, 法学部(日吉), 教授 (90365461)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | ポール・クローデル / 日仏交流 / スコラ哲学 / 日本思想 / 国学 |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年度は、当初の予定であれば、前年までの研究活動を総括して、研究成果を社会に向けて発信する年であった。しかし後述するように、2020年2月からの新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、研究活動に支障が生じ、計画を変更する必要が生じてきた。 前年に引き続き、クローデルがトマス・アクィナスが異教徒のアリストテレスを用いてキリスト教神学を精緻化したように、日本の国学思想を受容することで、自己の文学・哲学を精緻化していったことを明らかにした。現在、これらの成果を反映した論文集の編集を進めている。一方、2018年のクローデル生誕150年関連の企画を通して、これまで未見であった資料などが発見された。クローデルと親交のあった人物の遺族の所在も判明し、遺族からの聞き取り調査を行い、あわせて遺品等の調査もした。そうした調査の一端を「喜多虎之助という男がいた」という論文で報告した。しかしユベルスフェルドの『ポール・クローデル20世紀の詩人』の翻訳は2019年度中に刊行予定であったが、作業が遅れている。 またこれまでの研究から、今後の研究課題となり得るものも見つかってきた。ひとつはこれまでクローデルの文学観・形而上学観を日本の国学思想と神道を通して考察してきたが、京都の大徳寺、龍安寺などの禅宗寺院を訪問した経験などから、クローデルが禅宗思想に一定の評価を与え、国学同様に自己の文学観・形而上学観に取り込んでいることである。 こうした次の課題への架橋を考え、2020年3月にシンポジウム「クローデルとその時代」を企画したが、新型コロナウイルス感染拡大の影響で開催が困難になり、延期せざるを得なかった。また関西方面のクローデルと親交のあった人物たちの遺族への聞き取り調査等も継続して行う予定であったが、これも実施できない状態になっている。シンポジウムも調査も終息後、改めて行う予定である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、クローデルにおける日本思想、とりわけ国学とトマス・アクィナスを核としたスコラ哲学との関連を探る研究とクローデルの対話篇と言われる日本を題材にした三つの作品の翻訳・註解から成る。 日本思想とスコラ哲学の関連に関する研究は順調に進んでおり、問題はない。しかし翻訳・註解の作業は、クローデルの文章が難解であるのと、引用の出典等の特定などに手間取り、予定より遅れてしまっている。
|
Strategy for Future Research Activity |
本来は2019年度で、本研究は終了する予定であったが、新型コロナウイルスの感染拡大のため、研究を遂行することができないものが生じてしまったため、1年間の延長を申請した。2020年度には、新型コロナウイルスの影響で実施できなかった次の二点を中心に研究活動を展開する。①シンポジウム「クローデルとその時代」の開催。シンポジウムでは、クローデルの日本論を軸に国学思想をスコラ哲学を基に読み換えたことを報告する予定。時期は感染拡大の終息を見計らってから決定する予定。なおこのシンポジウムは水声社から論文集として刊行の予定である。②クローデルと親交のあった人物の遺族への調査の実施。この調査は聞き取りを予定しているが、高齢の人物なので、感染拡大が終息してから行う予定で、時期は未定である。 また1年間の研究期間の延長が認められたので、クローデルの対話篇の遅れている作業をこの間に進め、完成させる予定である。
|
Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染拡大の影響で、当初予定していた京都への調査・取材旅行を取りやめ、終息後に実施することにしたため。京都の調査・取材旅行は、クローデルと親交のあった人物の孫・親族を訪ね、遺品等を調査し、聞き取り取材をする予定であったが、孫にあたる人物が高齢で介護施設に入居していることもあり、取材をすることが困難になったため、終息後、その取材の旅費に使用する。
|
Research Products
(1 results)