2018 Fiscal Year Research-status Report
シュルレアリスム芸術の理論と創作における心霊主義の受容
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16K02552
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Research Institution | Kyoto Sangyo University |
Principal Investigator |
長谷川 晶子 京都産業大学, 外国語学部, 准教授 (20633291)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | シュルレアリスム / 心霊主義 / 霊媒芸術 |
Outline of Annual Research Achievements |
2018年度の主な研究成果は主に以下の2点である。 第一に、北フランスの心霊主義を代表する霊媒画家でシュルレアリスムの芸術家に影響を与えたフランスの画家フルーリ・ジョゼフ・クレパンに関する研究を、本の形で発表した(長谷川晶子『フルーリ・ジョゼフ・クレパン 日常の魔術』水声社、2018年10月末刊行)。この研究のなかで、心霊主義の創作活動における理論と創作が取り結ぶ関係を具体的に示すことができた。当初想定していた心霊主義とシュルレアリスムの理論と創作の影響関係は実証できなかったものの、それらの類似性のいくつかは示すことができた。加えて、クレパンという画家は心霊主義の霊媒画家として活躍したが、実際はその教義には忠実ではなくその枠にはおさまりきらないこと、この心霊主義の枠におさまりきらないという性質がシュルレアリスムの芸術家に評価されたことを確認することができた。 第二に、心霊主義の創作も含むアール・ブリュットとシュルレアリスム、そしてフランスの心霊主義の創作(特に霊媒の造形芸術)に関する最近の研究動向を「アール・ブリュットとシュルレアリスムの重なるところ」と題した文章にまとめ、日本フランス語フランス文学会のHPに発表した。心霊研究はフランスでは1990年代以降盛んに行われるようになっているが、心霊主義の創作に関する研究レヴューは日本では発表されていない。 これらのふたつの成果は、交付申請書に記載した平成30年度の研究計画には書かれていないが、シュルレアリスムの創作モデルとしての霊媒芸術を明らかにするという目標には沿ったものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
当初、第一年度は創作理論、第二年度は心霊主義の創作活動、最終年度はシュルレアリスムの創作活動の関係に焦点を当てる予定だったが、心霊主義の創作活動を明らかにする研究を著作にまとめて2018年11月に刊行するという予定外の作業が入ったせいで、シュルレアリスムの創作活動に関する研究の進捗が遅れている。そのため、補助事業期間延長をお願いした。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の方針としては、心霊主義や霊媒芸術に影響を受けたと考えられているイヴ・タンギーとヴィクトル・ブローネルの創作活動とテクストの調査を行い、その影響の射程を明らかにする。この研究結果に関する学術論文を所属研究機関の紀要『京都産業大学論集』に投稿する。
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Causes of Carryover |
研究を著作にまとめて刊行するという予定外の作業が入ったせいで研究の進捗が遅れてしまった。次年度使用額は、霊媒芸術に影響を受けたシュルレアリスムの芸術家たちの創作活動に関する調査費用として使わせていただくつもりである。
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Research Products
(1 results)