2016 Fiscal Year Research-status Report
アドルノとクラカウアーの初期思想における〈時間と空間の相互陥入〉モティーフの解析
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16K02556
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
竹峰 義和 東京大学, 大学院総合文化研究科, 准教授 (20551609)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | アドルノ / クラカウアー / フランクフルト学派 / メディア |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度は、1)アドルノの初期から中期にかけてのシェーンベルク解釈の比較・考察 2)ヴァイマル時代のクラカウアーの文化時評における「大衆」理解の変容 という二つのテーマを中心として研究を進めた。そこで明らかとなったのは、アドルノの十二音技法解釈における「時間の空間化」のモティーフが、1920年代から30年代初頭にかけての音楽批評においては「物象化」というモティーフと不可分であったのにたいして、40年代以降の音楽論になると、基本的な理論図式は維持されつつも、さらにそれが主体による自己展開の破綻という哲学的な主題と結びついているという点である。また、初期クラカウアーのテクストの分析からは、有機的な紐帯を喪失し、バラバラに孤立した大衆――クラカウアーは「点状化」と呼ぶ――にたいして、そのような現状を批判ないしは悲嘆するという立場から、そこに新たな形態の公衆が組織される可能性を読み取るという立場へと徐々に変化していったことが判明した。両者に共通しているのは、初期テクストにおける疎外論的な議論から、疎外の諸条件によって疎外を内在的に克服するという志向が生じていったという点である。1)の研究成果の一部については、10月に上梓した単著『〈救済〉のメーディウム――ベンヤミン、アドルノ、クルーゲ』(東京大学出版会)のなかに組み込んだ。2)の成果については、平成29年度に刊行される予定の共訳書、ミリアム・ハンセン『映画と経験』(法政大学出版局)の「訳者解説」として発表される予定であるほか、2学術論文としてまとめることも予定している。また、関連論考として、「投壜通信の宛先――フランクフルト学派の思想家たちの亡命期の手紙」を執筆・発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
単著の公刊準備のためにかなりの時間を取られたものの、刊行後に集中して研究課題を遂行することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度以降も、引き続き調査・研究を進めていく。とりわけ、ドイツでの資料調査と、研究成果を学会発表や学術論文のかたちでまとめる作業に重点を置きたい。
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Research Products
(2 results)