2017 Fiscal Year Research-status Report
ラトビア・イディッシュ文学のポリグロティズムの研究――M・ラズームヌイを中心に
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16K02567
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
ヨコタ村上 孝之 大阪大学, 言語文化研究科(言語文化専攻), 准教授 (00200270)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | イディッシュ / ユダヤ人文学 / ディアスポラ文学 / バイリンガリズム / ポリグロティズム |
Outline of Annual Research Achievements |
M・ラズームニィのすでに複写などで収集済みの作品、アーカイヴ資料(手紙、日記、メモ等)の読解を継続した。ディアスポラ文学などについての理論書の研究も並行して継続し、そこで得られた理論的視座を応用しつつ、ラトビアにおけるイディッシュ文学の特性を分析し、知見を深めた。バイリンガリズムとナショナリズムの逆説的な理論的整合性を検証した。そうした研究成果をポーランドにおける国際会議などで報告した。ポーランド出張に際してはあわせて、ユダヤ人拠点の一つであったアレンシュタイン市(現オルツイン市)を訪問、シナゴーグ跡、旧ユダヤ人墓地、同市ユダヤ文化センターを訪れ、東欧のユダヤ人社会・文化のありようを調べた。このように文献上の研究・調査と並行して、歴史的調査も継続した。また研究成果は共編・共著_Policing Literary Theory_(オランダ ライデン ブリル社 2018年1月)として刊行され、ユダヤ人文学に関わる章を2つ、寄稿したほか、大阪大学言語文化研究科刊行の論集にユダヤ性とコスモポリタニズムの関係を論じた論文を寄稿した。国内でも京都女子大学にて行われた、西日本ロシア東欧研究者集会において成果報告の発表を行った。また、アーカイヴ資料の読解からはラズームヌイの生涯と作品について新たな発見が得られつつあり、これを含む、ラズームヌイの伝記的研究をまとめる作業に取り掛かりつつある。オランダのブリル出版社と同研究の刊行を、同社のバルト研究シリーズの枠内で刊行する計画を編集者と打診中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ラズームヌイのアーカイヴ資料は手書きのものが多く、同資料を所蔵しているリーガ市のユダヤ文化センターでも読解できる司書がいなかったが、これらを複写し、日本国内で読解作業に努めているが、予想以上の困難な作業となっている。しかし、イディッシュ語専門家の赤尾光春先生の助言を得られるようになり、読解作業は次第に軌道に乗りつつある。最終年度内には同資料の全貌をつかみ、それをデータベース化し、また理論的分析を付け加え、研究を完成させることが十分に可能な状況である。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の研究通り、最終年度は資料収集・分析を継続するとともに、それらの作業によって明らかになった知見をまとめ、具体的な研究成果を盛り込んだ報告の作成に重点を移す。資料の分析あたっては、アーカイヴ資料の読解に予想以上の困難がともなったが、これも軌道に乗りつつあり、最終年度において新たな知見を含む、総括的研究成果達成の見通しが立っている。アーカイヴ資料の読解に向けて、さらに内外のネットワークを生かし、助言を求め、完全なデータベース化を達成する予定である。
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Causes of Carryover |
ごく少額の剰余金(3719円)が予算執行上生じたが、次年度に物品ないし図書購入費にあてる。
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Research Products
(5 results)