2018 Fiscal Year Annual Research Report
The Study of the Polyglotism of Latvian Yiddish Litearture: Through the Analysis of the Life and Works of Mark Razumnyi
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16K02567
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
ヨコタ村上 孝之 大阪大学, 言語文化研究科(言語文化専攻), 准教授 (00200270)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | ユダヤ文学 / イディッシュ / ロシア文学 / ディアスポラ文学 |
Outline of Annual Research Achievements |
ラトビア共和国のユダヤ系ジャーナリスト、作家、戯作家であるマルク(モイシェ)・ラズームヌイ(1896-1988)の生涯と文学的活動を総合的に研究した。ラズームヌイはポリグロット的傾向の強いユダヤ人文学者の中でも特にその特徴が強く、イディッシュ、ロシア語、ラトビア語、ドイツ語、英語で執筆・出版した。ロシア語以外の刊行物は入手が難しく、ラトビア中央公立図書館、ラトビア国立公文書館、ロシア公立図書館、ロシア国立図書館、スタンフォード大学図書館などに出張を行い、閲覧・収集した。伝記的史料に言及されている、英語での出版物を発見することはできなかったが、フランクフルト・ユダヤ新聞をラズームヌイのドイツ滞在期間全部にわたって閲覧することにより、最初に活字にした作品である、ドイツ語の短編小説を発見した。ほかにもイディッシュやラトビア語での著作を多数発掘した。これらの資料は科研費を用いて購入した亡命文学、ディアスポラ文学、ポストコロニアル文学理論書を利用して習得し、またさらに展開した読みの理論を用いて丁寧に読解し、彼の文学特徴を明らかにし、後述の国際研究集会における成果発表報告や論文集収録の論文の中で報告した。それは、たとえば、イディッシュの作家一般に共通するような民話的語りや、語彙の素朴さ、繰り返しの多い叙述などである。研究ではそのイデオロギー的、ディアスポラ的意味を明らかにした。またラズームヌイは反コスモポリタン運動に際して弾劾され、十年間の収容所生活を経て、文壇に復帰し、そののちは劇作をやめ、イッディシュの掌編小説の執筆に専念し、またそれらをロシア語およびラトビア語に翻訳した。それらのテキストの間の微妙なニュアンスの違いを分析することによって、ソ連におけるユダヤ人の文学的ありようのメカニズムを解明した。研究成果は一度の国内学会発表および2つの論文にて発表した。
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Research Products
(3 results)