2019 Fiscal Year Annual Research Report
The Anthropological Turn and the Establishment of Modern Literature in 18th Century Germany
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16K02568
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
津田 保夫 大阪大学, 言語文化研究科(言語文化専攻), 教授 (20236897)
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Project Period (FY) |
2016-10-21 – 2020-03-31
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Keywords | ドイツ文学 / 経験心理学 / 十八世紀 / 近代文学 / 小説理論 |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年度は前年度から中心的に行っていたブランケンブルクの『小説試論』に関する研究を継続し、その成果の一部を論文「人間学的小説理論としてのブランケンブルク『小説試論』」としてまとめ、発表した。その中ではとくに、18世紀中頃に起こった思想史的な人間学的転回と関連して生じてきた文学における人間学的傾向を持つ人間学的小説理論としてブランケンブルクの『小説理論』を捉え、その中に見られる人間学的要素と関連する近代文学的な性質を分析した。 その結果として、近代という時代の文学としての小説は公民としての人間ではなく、人間としての人間を見せなければならないのであり、「ありのままの人間性」すなわち「習俗や身分や偶然が与えうるあらゆるものを剥ぎ取られた人間性」こそが小説の描き出すべき重要な要素として提示されていること、そして「人間の内面と外面はきわめて密接に関連しているので、外面の現象と人間の表出全体を説明し理解しようとするならば、必ずその内面を知っていなければならない」という人間学的知識が作者に対して要求されていること、また一人の人間が完全性や調和へと達するまでの魂の成長過程としての「内面史」という概念が重要な意味を持つこと、さらには近代小説が美的機能だけではなく読者に「社交的情念」を引き起こすことによって感情面から完全性へと導くという人間教育的機能をもつことも強調されていることを明らかにした。 それに引き続いて、ブランケンブルクの提唱する内面史を実際に小説作品で占めそうと試みたカール・フィリップ・モーリッツの心理学小説『アントン・ライザー』の人間学的要素を、彼自身が編集に携わった『経験心理学雑誌』の心理学的要素との関連において考察したが、これについては、その成果をいずれ論文等の形で発表したいと考えている。
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Research Products
(1 results)