2016 Fiscal Year Research-status Report
ドイツ語圏における文学作品の映画化についての映画社会学的研究
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16K02569
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
山本 佳樹 大阪大学, 言語文化研究科(言語文化専攻), 教授 (90240134)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 映画 / 文学作品の映画化 / ドイツ文学 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度は、エーリヒ・ケストナーの児童文学の映画化とトーマス・マンの小説の映画化を中心に研究を進めた。 ケストナーの児童文学は、1950年代の西ドイツで次々に映画化されたが(『ふたりのロッテ』1950、『点子ちゃんとアントン』1953、『飛ぶ教室』1954、『エーミールと探偵たち』1954)、ドイツ再統一からしばらくして再び映画化のブームを迎えた(『ふたりのロッテ』1994、『点子ちゃんとアントン』1999、『エーミールと探偵たち』2001、『飛ぶ教室』2002)。このうち、とりわけ『エーミールと探偵たち』を中心に、資料を収集し、論文作成の準備をした。 また、マンの文学作品は、マン本人が強く映画化を望んでいたにもかかわらず、なかなか映画化が実現せず、長らく無声映画時代の『ブデンブローク家の人々』(1923)のみであった。ところが、第二次世界大戦後のアーデナウアー時代になると、西ドイツでマン作品の映画化ブームが起こり、1953年の『大公殿下』を皮切りに(マン生前の映画化としてはここまで)、1960年代にかけて次々に主要作品が映画化されることになった。とりわけ『ブデンブローク家の人々』は、テレビ映画を含めるとドイツだけでも4度映画化されている。この『ブデンブローク家の人々』の4度の映画化、および、マンの映画化作品のなかで最も名高いヴィスコンティ監督の『ベニスに死す』(1971)について、資料を収集し、分析した。 さらに、2010年以降のドイツ=トルコ映画の動向を考察した論文のなかで、移民二世の女性作家ハティチェ・アキュンによる2005年の同名ベストセラー小説の映画化作品『ピリ辛ソースのハンスをひとつ』(2014)を分析した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度は、ケストナーとトーマス・マンの複数回映画化された映画を扱い、その成立背景を映画社会学的に考察した。論文を執筆中であり、刊行は平成29年度になる。さらに、2月にベルリン映画博物館で、ナチ時代と東ドイツにおける文学作品の映画化についての資料や文献を収集できたことは、平成29年度以降につながる、本年度の大きな成果である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度はナチ時代における文学作品の映画化を中心に研究する。すでに平成28年度の調査から、ナチ時代における文学作品の映画化には、ドイツとロシアの19世紀文学からの映画化が多い、原作には比較的忠実、右翼系監督と左翼系監督の両方がかかわっている、といった特徴をあきらかにしており、具体的な作品分析の即してさらに考察を進めていく予定である。
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Causes of Carryover |
研究を進めていくうえで必要に応じて予算を執行したため、当初の見込み額と執行額とのあいだにわずかながら誤差が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
使用計画に変更はなく、前年度の研究費も含め、当初予定通りの研究を進めていく。
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