2018 Fiscal Year Research-status Report
ドイツ語圏における文学作品の映画化についての映画社会学的研究
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16K02569
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
山本 佳樹 大阪大学, 言語文化研究科(言語文化専攻), 教授 (90240134)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 映画 / 文学作品の映画化 / ドイツ文学 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成30年度は、まず前年度から研究を進めてきたトーマス・マンの小説の映画化について、とりわけ『ヴァイマルのロッテ』(エーゴン・ギュンター、1975)をとりあげ、東ドイツ社会のなかで文学作品の映画化が担っていた機能を中心にして論文にまとめた。東ドイツにおいて、古典的文学作品の映画化がもつひとつの側面は、安定化をもたらす力であり、それは啓蒙原理の前進に寄与した偉大な精神の価値を国民に確認させるものであった。もうひとつの側面は、規範的な作品の再読による社会批判であり、『ヴァイマルのロッテ』では東ドイツにおけるゲーテ崇拝を風刺している。さらに、東ドイツ映画という文脈で、ゼバスティアン・ハイデュシュケの著書『東ドイツ映画―デーファと映画史』(鳥影社)を翻訳・出版した。これは東ドイツ映画を本格的に紹介した日本初のモノグラフィである。 また、ナチ時代における文学作品の映画化についても資料収集を継続した。その特色のひとつとして、19世紀のドイツ文学・ロシア文学が多いことが挙げられる。その理由については検討中である。具体的には、クライストの『こわれがめ』、シュトルムの『みずうみ』、ケラーの『馬子にも衣装』などについて作品分析を行ない、論文を準備中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
トーマス・マンの小説の映画化について、東ドイツ時代の『ヴァイマルのロッテ』(エーゴン・ギュンター、1975)をとりあげて論文を執筆し、東ドイツ社会のなかで文学作品の映画化が担っていた機能について考察することができた。また、ナチ時代における文学作品の映画化についての資料収集も順調に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成31年度は、ナチ時代における文学作品の映画化について分析を継続し、論文にまとめる。
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Causes of Carryover |
(理由) 父親の介護に時間をとられたために一部研究を完成できなかった部分があり、次年度使用金が生じた。 (使用計画) 大きな変更はなく、ナチ時代の文学作品についてさらに資料収集を続け、成果を発表する予定である。
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