2019 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
16K02573
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Research Institution | Tokyo Medical University |
Principal Investigator |
城 眞一 東京医科大学, その他部局等, 名誉教授 (60424602)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | ドイツ語文学 / リルケ / ベーメ |
Outline of Annual Research Achievements |
リルケとオカルティズム研究における一つの作業仮説をめぐって、その検証が必要となったため、2018年度はJ.ベーメ研究に時間を費やした。その成果を本来のリルケの詩論研究に投入して説得力ある結論を導くことが最終年度の目標であった。そして暫定的結論を、所属学会の機関紙ないしは研究発表会にて公にする予定であった。しかし2019年度のはじめに健康上の理由から活動が制約され、自宅療養を強いられた。この時点で、計画の遂行がほとんど不可能と予測され、研究期間の一か年延長を念頭に研究ペースをさらに低下させた。 結果として、ベーメにおけるエクリチュールの絶対的な自己矛盾の問題を、リルケの詩的方法における根本的分裂に重ねあわせるまでには至らず、したがって、二者の創作方法を比較してその精神史的意義を抽出することも能わなかった。 秋口にようやく本来の研究ペースを回復することができたが、この季節には新たな科研プロジェクトの企画に誘われ、申請書の作成に協力した。過去に二度研究代表を務めたことのある企画「プラハとダブリン」の、第4期目の試みであったので、おのずと議論に熱が入った。この活動が今年度の唯一の対外的な接点を伴う研究活動であった。 2020年に入ってからは、周知のとおり、疫病の流行が始まり、資料収集や打ち合わせなど一切の移動や集会が危険を伴うものとなり、所属学会においても個人のレベルにおいても延期または中止を余儀なくされた。資料の整理と文献の繙読が日常となった。 過去10余年において、今年度の研究の低迷と成果の不毛は、まさしく未聞のことがらであった。ただし、行動が制約されたがために、かえって己の研究目標が鮮明に自覚されてきたことは、孤独の中の一条の光であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
1.研究代表者の健康上の理由 2.疫病の流行による研究活動の制約 3.当初の課題に含まれていた作業仮説の一つに、検証の必要が生じたため
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Strategy for Future Research Activity |
規則上これ以上の期間の延長はないので、2020年度には研究を締めくくりたい。収集した資料を突き合わせ、リルケのオカルテイズムにかかわる最も本質的な問題、すなわち、口授の構造の解明とその問題性の剔出を図りたい。 なお外的要因によって研究発表が制約されることがあるので、ポータルサイトにおける未発表の原稿の公開など、あらかじめ対策を講じるつもりである。
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Causes of Carryover |
1.研究代表者の健康上の問題に起因する研究活動の低下 2.疫病の流行による研究活動の低迷(旅行の中止など) 3.使用計画として、研究発表ないしは書籍出版打ち合わせのための旅費、文献収集のための旅費、書籍代金、その他に、IT機器の買い替え費用等を見込んでいる。なお、疫病が再流行を見た場合、このうち、旅費の支出はなくなる。その場合は、研究期間が終了後も、特別の措置で、事後の予算使用を認めていただければ幸いである。
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