2019 Fiscal Year Annual Research Report
Descriptability of the city Berlin in modern German literature
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16K02576
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
岡本 和子 明治大学, 文学部, 専任教授 (50407649)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | ドイツ文学 / ベルリン / フォンターネ / グルク / 都市 |
Outline of Annual Research Achievements |
2018年度に引き続きベルリン文学の分析を行い、とくに、フォンターネとグルクの作品を比較対照しつつ、ベルリン文学の展開のあり方に迫った。フォンターネにおける都市は、主人公が閉鎖的な空間(家や職場)から外界に出てゆくための「道」として描かれている。例えば、都市がしばしば旅とが結び付けられているのはその典型的な例である。それに対して、グルクにおけるベルリンは、犯罪小説の現場として描かれており、主人公は初めからそうした都市の内部に存在している。しかしそうして描かれる都市空間は、戸外、路上であり、守られた空間ではない。第一次世界大戦を経たのち、ベルリンはますます内部から描かれるようになるが、そうして描かれるこのベルリンは、理想よりも過酷な現実の場を映すものとなっている。都市という現実がいまだに理想と結び付けて描かれていたフォンターネと比較することによって、グルクにおけるベルリン描写の過酷さがより明らかになった。 グルクという作家は、当時の文学活動の主流であった表現主義やシュルレアリスムといった枠組のなかに収まらない特異な作家であり、推理小説風の舞台装置や非合理的なものを小説のなかに組み込んでいる点で斬新である。しかし、ドイツにおいてもいまだ全集の刊行には至っておらず、その都市記述の先駆性に比して、あまり研究されてきていないという状況である。本研究が、フォンターネと比較することによってグルクにおける都市描写の新しさと、また不気味さ・不穏さを擁する町としてのベルリン像を浮き彫りにすることによって、今後、グルクが重要な都市文学作家としてさらに注目されることが期待される。
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Research Products
(1 results)