2018 Fiscal Year Annual Research Report
The History of Demonology in the European Literature
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16K02577
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Research Institution | Heian Jogakuin(St.Agnes')University |
Principal Investigator |
高橋 義人 平安女学院大学, 国際観光学部, 教授 (70051852)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
ウェルズ 恵子 立命館大学, 文学部, 教授 (30206627)
田村 和彦 関西学院大学, 国際学部, 教授 (50117719)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 悪魔 / キリスト教 / 神の死 / ファウスト / ナチズム / スターリニズム / トーマス・マン / ブルガーコフ |
Outline of Annual Research Achievements |
大著『悪魔の神話学』を書きあげたのは2017年だったが、その後、何度かの校正作業を経て、本書は2018年6月に刊行された(岩波書店)。本書は、佐藤優氏によって雑誌『AERA』で1頁全部を使って高く評価された他、毎日新聞の年末の「今年の3冊」で二人の評者によって今年の収穫3冊のうちの一冊に選ばれた。 18世紀以降、「悪魔」は迷信だ、非科学的だと一方では考えられながらも、他方では悪魔に対する関心が増大していった。その過程を研究会(3ヵ月に一度開催、開催場所は立命館大学と平安女学院大学)で追求した。取り上げられたのは、ドイツ・ロマン派における悪魔像、ナチズムと悪魔、スターリニズムと悪魔、米国における人種差別投影としての悪魔像だった。 その結果、次の結論が導かれた。①中世においては神への信仰が強まるのとともに、悪魔への関心が増大していったが、近代においては逆に神への信仰が薄まるのとともに悪魔像が肥大化していった。悪魔に関する言説の流行は、じつは「神の死」の進行度を示す症候である。②近代において「悪魔」は他人を罵倒するときの常套語になり下がっている。悪魔は世俗化した社会を闊歩している。③ミシェル・フーコーが力説したように、「神の死」の後にやってきたのは「人間の死」だった。人間が死んだ後の荒地を悪魔は支配している。それが如実にうかがえるのはナチズム下のドイツとスターリニズム下のソ連であり、その恐ろしさはトーマス・マンの『ファウストゥス博士』とブルガーコフの『巨匠とマルガリータ』にはっきりと描かれている。 とりあえずそのような結論には達したものの、それをさらに深く掘り下げることは今回はできなかった。特に「神の死」と悪魔像との関係に関しては、ヨーロッパ文学研究と宗教学研究とが提携して取り組む必要がある。次は「ファウストと〈神の死〉というテーマで、研究を続ける予定である。
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Research Products
(19 results)