2020 Fiscal Year Research-status Report
先秦両漢の詩賦とその解釈の再検討―「南方エキゾチシズム」の観点から―
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16K02583
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
大野 圭介 富山大学, 学術研究部人文科学系, 教授 (30293278)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 中国文学 / 神話 / 詩経 / 毛詩 / 古注 / 楚辞 / エキゾチシズム |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は前年に引き続き、「桃の会2017年9月例会」において行った口頭発表「舜の「南風歌」をめぐって」について、『孔子家語』のテキストとしての信憑性を中心に再検討を進めた。これは先秦の『尸子』以来『孔子家語』に至るまで文献に歌詞が見えない「南風歌」について、『韓非子』以後前漢期には「舜が五弦の琴を弾いて『南風』を歌った」という話がほぼ固定した形の句として語り伝えられていたこと、この歌の形式が舜のような帝王の歌と伝えられているどの歌とも類似せず、むしろ『孟子』及び『楚辞』漁父に引かれる「滄浪歌」と類似することに注目し、「南風歌」は帝王の歌にふさわしくないと認識された故に文献には録されなかったものの、楚北地域に脈々と伝承されていた可能性を論じたものである。 また楚地の神話伝説を色濃く反映しているとされてきた『山海経』について、書名の「山海」という語がどのように生じたのか精査したところ、もとは戦国期の斉の思想を反映した『管子』に説かれる経済政策に特有の術語であり、漢初までに楚にも広まっていた可能性が高いことが判明した。『山海経』の中でも五蔵山経の部分の記述スタイルが『管子』に類似することや、『山海経』の成立に斉の稷下学士が関与している可能性については、既に論文として発表済みであるが、今回判明した事実はこれらを傍証するものといえる。 以上の研究はコロナ禍の影響によって、進展途上のまま発表するには至っていないが、最終年度において論文として完成させ、発表する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
コロナ禍により研究を進展させることが困難な状況になったため。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度前半は停滞している前年度の研究を完成させることに注力する。後半において『詩経』古注と『楚辞』の関係について精査し、本科研費研究の成果を最終的に取りまとめる。
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Causes of Carryover |
コロナ禍により当初予定していた旅費の使用がなくなったため。 次年度使用額は旅費(今後旅費の使用が可能になった場合)及び先秦両漢文学関連の書籍に使用する予定である。
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