2022 Fiscal Year Annual Research Report
A Reexamination of Pre-Qin and Han Shi-fu(Chinese Poetry and Prose Poem) and Their Interpretations: From the Perspective of "Southern Exoticism"
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16K02583
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
大野 圭介 富山大学, 学術研究部人文科学系, 教授 (30293278)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 中国文学 / 神話 / 詩経 / 毛詩 / 古注 / 楚辞 / エキゾチシズム |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究ではまず先秦時代の神話伝説における地域と描写叙述との関連について、論文「『詩経』における情景描写の変遷 ―大雅の開国叙事詩を中心に―」及び「詩語「崑崙」の誕生」で、古代中国における風景描写が開国神話などの物語に付随する形で始まったことを解明し、さらに「舜の「南風歌」をめぐって」と題する口頭発表(2023年度中に論文として発表予定)で、先秦の『尸子』以来、三国魏の王粛の編とされてきた『孔子家語』に至るまで文献に歌詞が見えない「南風歌」が楚北地域に脈々と伝承されていた可能性を論じ、埋もれた地域神話が文学の伝承に影響を及ぼしていることを明らかにした。また論文「『山海経』から『白沢図』へ」で、地理を知悉する神としての禹の伝説が、漢代の淮南から呉越のかけての地域で根強く信仰されていたことに言及している。 本研究のもう一つの柱である『詩経』の漢代諸注釈への『楚辞』諸作品のイメージの影響について、口頭発表「論《詩経》古注的恋愛詩解釈」で、上海博物館楚簡『孔子詩論』で妻を待つ歌と解している「采葛」が古注で君王を待つ歌と解していることに、『楚辞』で女神への憧憬が君王への忠誠に転化して解されたことが影響した可能性を論じ、『詩経』と『楚辞』の解釈が互いに影響し合っていたことを解明した。 今年度はこれらに加え、楚地の神話伝説を色濃く反映しているとされてきた『山海経』について、書名の「山海」という語がもとは戦国期の斉の思想を反映した『管子』に説かれる経済政策に特有の術語であり、漢初までに楚にも広まっていた可能性が高いことを明らかにした。これについては論文「『山海経』の書名について」を発表予定である。また論文「王逸『楚辞章句』の引詩について」で、王逸が『楚辞』の章句に『詩経』を盛んに引用することによって、辞賦に押されて衰退しつつあった楚辞文芸を経書並みの地位に高めようとしていたことを論じた。
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