2017 Fiscal Year Research-status Report
多言語文献と図像・文物資料によるモンゴル時代の東西交流の実態解析
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16K02584
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
宮 紀子 京都大学, 人文科学研究所, 助教 (60335239)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | モンゴル時代史 / 東西交流 / 大元ウルス / フレグ・ウルス / ラシードゥッディーン / 中国科学 / ペルシア語 / 抄物 |
Outline of Annual Research Achievements |
モンゴル時代に編まれた多言語の典籍・碑刻、図像資料、出土文物・工芸品・美術品のデータを収集・整理し、とうじの東西交流を詳細に描出・再現することを目指す。 13-14世紀のユーラシアの東西交流を具現する資料をカラー画像で40件ほど取り上げ、『集史』『ヴァッサーフ史』をはじめとするペルシア語古写本、いわゆるマルコ・ポーロの『百万の書』(別名『世界の記述』。同時代のイタリア語の年代記に掲げられる書名を優先)をはじめとするイタリア語・フランス語資料、漢籍、日本の中世年代記や日記、抄物の記述(学界未知の文献も含む)を以てわかりやすく解説する試みを行った。また、ナスィールゥッディーン・トゥースィー、ラシードゥッディーン・ハマダーニーの著述の中国に関わる部分について、中国科学史、中国史等様々な分野における利用・参照を目的として、画像資料・同時代の多言語原典資料を併用しつつ訳注を作製した。それらの成果は、学術書『モンゴル時代の「知」の東西(上)(下)』(名古屋大学出版会)に収録した。この学術書は、本田實信『モンゴル時代史研究』(東京大学出版会 1991年)へのオマージュでもあり、附論を含めて同数の全23編を収録した。後進に投げかけられていた課題のいくつかは、四半世紀を経過して、資料情況の激変等に伴い、回答を呈示することが可能になった。いっぽうでこの期間に進行した過度な業績主義によって、若手研究者の視野狭窄(葉を見て森を描く類)、同じ資料の使いまわし、先行研究の美化の論いと自己に対する過大評価等が深刻化しており、そうした傾向にたいする「抵抗」、人文学(古典学・歴史文献学)研究に求められる最低限の水準の提示の意図も込めた。 なお、社会への還元を目的として、それらを要約し、平たく書き直した論文二編も公刊した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
国内外の多言語原典資料・発掘報告・研究書、論文等の蒐集を滞りなく実施し、ペルシア語資料の訳注作業も順調に進んでいる。 今年度は、菊版で約1200頁の学術書、社会への還元に位置づけられる二本の論文を公刊した。それらの中で、学界未知の資料、記述を原文そのままに日本語によって多数紹介した。
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Strategy for Future Research Activity |
同じペースで粛々とさらなる資料収集・調査・研究を進め、論文・著書の執筆を進める。得られた知見の英語での発表にも努める。
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Causes of Carryover |
大英図書館でのペルシア語古写本調査を予定していたが、インターネット上に当該機関による全頁のカラー画像の公開がなされたため、イランやトルコにおいて出版された研究課題に関連するペルシア語古写本の影印の購入に切り替えた。
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Research Products
(5 results)