2017 Fiscal Year Research-status Report
「粗悪本」を中心とした中国通俗小説の出版および受容に関する研究
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16K02589
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
川島 優子 広島大学, 文学研究科, 准教授 (30440879)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 中国通俗小説 / 粗悪本 / 金瓶梅 / 水滸伝 / 日本における受容 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、日本国内に所蔵される『金瓶梅』を中心とした中国通俗小説の刊本について網羅的な調査を行い、これまで顧みられることのなかった「粗悪本」を通して、中国通俗小説あるいは漢籍そのものの受容について、また中国通俗小説の出版問題について、従来とは異なる視点からの考察を行うことを目的とする。 本年度も、昨年度にひきつづき「日本における『金瓶梅』を中心とした中国通俗小説について、特に「粗悪本」の所蔵状況を明らかにする」ことを中心に、『金瓶梅』の版本の中で最も流通した「第一奇書本」の調査を進めた。その過程で、『金瓶梅』の生みの親でもある『水滸伝』の版本に目がとまった。『水滸伝』はいくつもの版本を有し、最も古いテキストである容与堂刊『李卓吾先生批評忠義水滸伝』のほか、代表的なものとして、芥子園刊『李卓吾評忠義水滸伝』、無窮会刊『李卓吾評忠義水滸伝』、金聖嘆の『第五才子書施耐庵水滸伝』等がある。これらの版本には、いずれも圏点傍点、眉批旁批が付されており、こうした「批評込み」で紙面が構成され、ひとつの世界を形作っている。本文そのものはほとんど変わらずとも、批評の在り方によって、各テクストの世界観が大きく異なっているのである。そこで、当初予定をしていなかったものの、『水滸伝』におけるこれらの版本について、批評を中心に調査を行った。批評については『金瓶梅』にも「崇禎本」および「第一奇書本」に付されており、いずれ検討すべき問題である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は、昨年度に引き続き、日本国内における『金瓶梅』の所蔵状況の調査を行った。しかしその過程で派生する別の問題(上述の『水滸伝』の版本について)に着手したこともあり、当初の予定からはいささか道をはずれてしまい、計画通りには進まなかった。しかし派生した問題については、すでに論文を作成し、七月に刊行される予定である。また、明代における『金瓶梅』の流通状況を明らかにするために、当時の文献についての訳注作業も行った。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続きこれまでの調査を行うと同時に、より具体的な考察を加える。日本国内における『金瓶梅』の所蔵状況について、特に「第一奇書本」を網羅的に調査し、可能な限り目睹した上で目録を作成する。また西本願寺歴代宗主のコレクションである龍谷大学大宮図書館写字台文庫蔵「金瓶梅」についても、さらなる調査を行う。
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Causes of Carryover |
データベースを利用した所蔵調査、過去に収集した資料を用いた調査、国立公文書館での調査等、基礎的な調査に専念したため、当該予算を一部繰り越すこととなった。次年度は、設備備品費、消耗品費に加え、国内旅費(資料調査および研究会等参加)、国外旅費(資料調査および研究会等参加)に予算を使用すると同時に、本研究に関する成果発表にも予算を使用する予定である。
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