2017 Fiscal Year Research-status Report
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16K02594
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Research Institution | Daito Bunka University |
Principal Investigator |
中川 諭 大東文化大学, 文学部, 教授 (20261555)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 三国志演義 / 版本研究 / 二十四巻系諸本 / 李漁本 / 英雄譜本 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度は、28年度後半から資料収集を始めていた『李笠翁批閲三国志』(李漁本)について、詳細に分析・検討を行い、研究論文としてまとめた。李漁本は世界各地に数種類伝えられているが、それらは全て同版である。そして最も印刷が早いものが、中国国家図書館蔵本(請求番号17756)、2番目がフランス国立図書館蔵本、3番目が首都図書館蔵本(請求番号977)、4番目が京都大学蔵本、5番目が中国国家図書館蔵本(請求番号18221)、最も遅いものが首都図書館蔵本(請求番号119)である。李漁本は従来『李卓吾先生批評三国志』(李卓吾本)を底本とすると言われていたが、『三国志演義』諸本との比較検討の結果、遺香堂本(その実、遺香堂本そのものではなく、遺香堂本の祖本となった版本)を主たる底本とすることが分かった。ただし、一部分すなわち第四十三則(第二十二回)から第五十則(第二十五回)のみ李卓吾本を底本としている。また全体にわたって、ところどころ毛宗崗本の影響が見られる。李漁本の文章は複雑な過程を経て成立したものである。この成果を、2017年8月26日に中国伝媒大学で開催された「2017年第十六届中国古代小説戯曲文献曁数字化国際学術研討会」にて「《李笠翁批閲三国志》再考」と題して研究発表を行った。 また『精鐫合刻三国水滸全伝』(英雄譜本)についての資料収集と検討を始めた。従来英雄譜本は一種類のみと考えられていた(清末の『漢宋奇書』を除く)が、その実四種類が存在しているようである。これについてはさらに考察を深め、平成30年度中に研究成果をまとめる。 その他、本研究課題全体に関わる一般的な内容をまとめ、「数字化時代的古代小説版本研究――以《三国志演義》版本研究為例」と題する論文にまとめ、2017年8月27日に中国伝媒大学で開催された「“数字化時代的中国俗文学研究”学術研討会」において発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究題目にある「二十四巻系後期諸本」に該当する鍾伯敬本・英雄譜本・遺香堂本・李漁本について、おおよそ資料を収集することができ、分析・検討も順調に進んでいる。28年度・29年度それぞれ研究成果を国際学会の席上で口頭発表した。 ただ、遺香堂本の一本が北京大学図書館に蔵されている。しかし北京大学図書館の善本閲覧室がいまだ公開されておらず、閲覧することができない。そのため遺香堂本についての論文を完成させることができずにいる。
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Strategy for Future Research Activity |
北京大学図書館の善本閲覧室はこの何年かにわたって公開が停止されている。2018年秋には再び公開されるという情報があるので、公開され次第北京を訪れ、同館に蔵される遺香堂本の調査を行う。そして遺香堂本に関する論文の完成稿を仕上げる。 29年度中に資料収集と検討を始めた英雄譜本について、さらに分析を進め、成果をまとめて論文を執筆する。 さらに本研究課題の最終年度として、3年間の研究成果を総括する論文も執筆し公開する予定である。
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Causes of Carryover |
例年8月に開催されている「中国古代小説戯曲文献曁数字化国際学術研討会」が、2018年度についてはマレーシアとドイツの2個所で開催されることになった。それぞれに参加し、それぞれ研究発表を行う予定である。その旅費として使用する。 また一般公開が延期されている北京大学図書館の善本閲覧室が、今秋に公開される討情報がある。公開され次第北京を訪れ、資料を複写する。その旅費と複写費とに使用する。
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