2018 Fiscal Year Annual Research Report
Studies of Twenty-four-volume late editions of "Sanguozhi-Yanyi"
Project/Area Number |
16K02594
|
Research Institution | Rissho University |
Principal Investigator |
中川 諭 立正大学, 文学部, 教授 (20261555)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | 三国志演義 / 二十四巻系諸本 / 英雄譜本 / 鍾伯敬本 / 遺香堂本 / 李漁本 / 呉観明本 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は研究期間の最終年度でもあり、これまでの成果をまとめ、研究論文を執筆して公表することが中心となった。 『李笠翁批閲三国志』(李漁本)は主として遺香堂本を底本にしているが、一部李卓吾本(呉観明本)に依っていること、また部分的に毛宗崗本も参照していることが明らかになった。『鍾伯敬先生批評三国志』(鍾伯敬本)は東京大学東洋文化研究所と天理図書館に蔵されているが、天理図書館本の方がわずかに印刷が早いこと、鍾伯敬本は李卓吾本の中でも呉観明本を底本としていることが分かった。『三国志演義』と『水滸伝』を合刻している『精鐫合刻三国水滸全伝』(英雄譜本)には、『三国志演義』部分で半葉十三行の本と十四行の本の二種類があること、そしてそれぞれに正本と覆刻本があることが分かった。さらに十三行本こそが本来の「英雄譜」本であり、十四行本は“「英雄譜」本”に基づいて翻刻した“「二刻英雄譜」本”であることが明らかになった。そしてこれに基づき、「英雄譜」本と「二刻英雄譜」本は明確に区別しなければならないことを提唱した。 『三国志演義』二十四巻系後期諸本には四種類の版本があるが、そのうち鍾伯敬本・英雄譜本・遺香堂本(遺香堂祖本)は李卓吾本の一つである呉観明本を直接の底本として成立したものである。すなわち呉観明本から明末清初期の『三国志演義』版本の多くが派生しているのであり、明末清初期の『三国志演義』版本の成立と出版を考える際に、呉観明本は決して軽視してはいけない、極めて重要な版本なのである。この点が本研究の総括となる。
|