2016 Fiscal Year Research-status Report
An Analysis of Central and West African Folktales as a Means of Understanding Central and West African Values and as a Tool for Foreign Language Learning
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16K02608
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Research Institution | Sophia University |
Principal Investigator |
永井 敦子 上智大学, 文学部, 教授 (50217949)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | アフリカ文学 / 民間説話 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度の調査、研究、実践、成果の発表について、以下内容別に記す。 アフリカ中部・西部の民間説話の分析に関しては、説話のフランス語訳の収集と読解、マックス・リュティなど民間説話の先行研究のなかの分類方法に照らした分析を遂行中である。その分析内容の一部を『改革者』掲載の論考中に記した。 説話の教育への適用方法については、主としてEmmanuel Matateyou氏の研究を参考にしつつ研究し、自らの授業でその実践方法を検証している。 民間説話の語りの教育への適用に関しては、共同研究者であるコートジボワールのCERAP大学部Francois Kabore教授と議論し、先方大学で講演した際に本務校学生とのスカイプフレンドを募り、アフリカ民間説話に関する本務校演習の登録者全員に割り振り、スカイプで説話解釈や語りの練習を行ってもらった。その成果は授業内および学科内発表会で学生が発表した。その際の学生の自己評価や感想などは本研究報告書に掲載する予定。 国立民族学博物館江口一久名誉教授の遺族所有の現地語による民間説話の語り等の音源のデジタル化と現地への返還計画に関しては、音質の確保、資料分類方法、返還方法等についてフランス国立図書館音源課長Pascal Cordeleix氏に面会し、アドバイスを受けた。音源を高く評価された氏からは全音源をフランス国立図書館が預かって高い音質でデジタル化し、江口教授の遺族、勤務先、研究費出資元との権利面の問題が解決できればその複製を自由に頒布する可能性が示された。その後国立民族学博物館の教職員の方々と話し合い、結果的に音源の所有者が遺族から同博物館に移され、同博物館がデジタル化を行うことになった。そのため同博物館からはトーゴなどの録音先での権利面の調査を行う可能性が示された。この点に関し再度Coedeleix氏等よりアドバイスを受け、現在調査中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画については、各内容に関してほぼ順調に進展している。ただ、今後の研究については特に以下の点を留意したい。 説話の収集と分析については、フランス語で読むことのできる説話の収集と研究文献の収集は進んでいるものの、当初射程に入れていなかった現地の文化的背景の研究は、今後も継続する必要がある。また分析方法について西欧、アジアの説話等を分析した先行研究の分析方法は研究したが、アフリカの説話への適用方法、さらに新たな視座からの分析可能性を検討する必要性を感じている。そのためにも、文化人類学的研究の応用も検討してゆきたい。 民間説話の語りの教育効果の検証については、アフリカの学生と日本の学生とが知り合い、交信することの意義は示された。しかし実施面において、時差の問題の解決方法の他、自由時間の少ない日本の学生に、教員から提案された活動を課外に行う動機を涵養するための方法の追求が課題として残っている。この点についてはさらに検討し、解決方法を探りたい。 民間説話の音源のデジタル化と録音地への帰還、及びその音源の現地での活用の検証に関しては、デジタル化に関する技術的な問題、研究者個人が解決できる問題ではなく、各研究・教育機関との折衝や共同研究が必須である点、慎重に解決すべき諸権利の問題などがあるため、当初の計画とはその方法がかなり異なった面がある。しかしながら、今回の研究を通じて結果的に、江口教授のご遺族がカセットテープのまま長年所有されていた音源が教授の勤務先であった研究機関によってデジタル化される運びとなったことには、大きな意義があったと考える。今後は、音源を所有する研究機関の所属ではない者として、どのような活動をどこまで有効に行うことができるかを検討し、音源の現地への帰還という当初の目的のひとつに近づけてゆきたい。
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Strategy for Future Research Activity |
説話の分析については、今後文化人類学的な背景への理解をさらに深めるため、当該地域に関する民族学、文化人類学的先行研究の調査に加え、当該分野の日本、研究者の多いパリ及び現地アフリカの研究者との研究交流や、日本の説話との比較を含めた講演を行い、理解を深めてゆきたい。 説話の語りの教育効果の分析に関しては、昨年度は大学の高学年の学生を対象とした演習のなかで行ったため、今後は初年時の学生を主たる対象とした試みとその効果の検証を行うことで、分析の対象を拡げてゆきたい。 音源の返還に関する活動や調査に関しては、国立民族博物館の関係教員と緊密な連絡を取りながら、この分野で実績のあるフランス国立図書館の音源課長及び同課所属の専門研究者の意見をあおぎつつ、慎重に進めてゆきたい。また、その調査内容や作業準備の過程で触れる文化人類学的先行研究や、その活動や調査を通じて現地の文学生産、文学の受容の実態に触れることで、説話自体の研究をさらに深めてゆきたい。
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Causes of Carryover |
3月にフランスにおいて研究活動を行った際、購入を予定していた複数の書籍を見つけることができなかったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
購入を予定していた書籍については、一部については古書を見つけ次第購入する。また図書館で閲覧することで済ませる場合は、関連する他の書籍を購入する。
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