2019 Fiscal Year Annual Research Report
Proletarian Literary/Cultural Movement in Colonial Korean and its relationship with Japan
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16K02611
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Research Institution | Musashi University |
Principal Investigator |
渡辺 直紀 武蔵大学, 人文学部, 教授 (80409367)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 植民地 / 朝鮮 / 映画 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度(2019年度)は本課題の最終年度であった。本来、前年度(2018年度)を最終年度として予定していたが、勤務校で在外研究の機会を得て、韓国・ソウルに12月末まで滞在することになったため、ソウル現地で調査活動や研究会参加ができたので、研究費を2019年度に繰り越して使用した。本年度は植民地朝鮮のプロレタリア文学者も数多く関与した、同時期の朝鮮における映画事業、特に映画評論の実際について調査・研究した。植民地時代の朝鮮映画は、実際の作品が散逸するなどの理由で、長い間、実質的な研究が進まずにいたが、今世紀になって、韓国映像資料院が北京やモスクワなどで、散逸したと思われていた映画フィルムを発掘し、2007年にDVD『発掘された過去』として刊行したのを機に、主として韓国で数多くの研究が進められた。言うまでもなく、植民地朝鮮の映画事業も、当時の日本の映画史との関連を抜きにしては語れない。その典型的な事例と考えられるのが、植民地時代末期に日本と朝鮮のあいだで行われた映画の合作事業である。たとえば、日本の映画監督・今井正(1912~1991)が植民地朝鮮の映画監督・崔寅奎(1911~?)らと戦中に作った日朝合作映画『望楼の決死隊』(1943)と『愛と誓ひ』(1945)は、ともに今井の所属する東宝と、当時、朝鮮の映画製作を一社で引き受けていた朝鮮映画製作との合作で作られ、戦争プロパガンダとしての性格も強い一方で、きわめてエンターテイメント性に富んだものだったが、日本の映画製作技術を必要とする朝鮮側と、戦時宣伝の有効性を喧伝したい日本側の同床異夢が、映画の製作過程から実際の内容にまで幅広い分野でさまざまな「合作」を可能にさせたと言える。
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